暖房が本格的に入る季節になると、「事務室は暖かいのに、廊下やトイレが妙に寒い」という声が出てきます。原因の一つが、トイレや給湯室に付いている排気ファン(室内の空気を屋外へ出す換気扇)です。小さな設備ですが、運転のしかた次第で、暖めた空気を休まず外へ捨てていることがあります。

排気した分だけ、外の冷たい空気が入ってくる

排気ファンが空気を出せば、同じ量の空気がどこかから建物に入ってきます。入口は、外壁のガラリ(給気口)、ドアや窓のすきま、廊下側のドアの下などです。冬は入ってくる空気が冷たいため、暖房機器はその空気を暖め直す必要があります。トイレ側から冷気が流れ込み、廊下や隣接する執務室が寒くなるのもこのためです。

24時間回すべきか、まず確認する

トイレ・給湯室・倉庫などの排気ファンは、設計時から連続運転にしている建物が少なくありません。一方で、夜間や休日に人がいない時間まで同じ風量で回し続けている例も見られます。次の点を順に確認すると、無理のない見直しにつながります。

  • 運転スケジュール:タイマーや中央監視(建物の設備をまとめて管理する装置)で、使用時間帯に合わせた運転になっているか。
  • 風量の過不足:実際の使い方に対して、風量が大きすぎないか。
  • 給気の経路:排気に見合う給気が確保されているか。足りないと、ドアが重くなる・ドアの笛鳴りがする・においが廊下に流れるといった症状が出ます。
  • 臭気や湿気の状況:止めたり弱めたりした場合に困る状況がないか。

運転を弱めたり止めたりする場合は、必ず設計図書や設備担当者・保守業者に確認してください。においや湿気、衛生面の基準に関わる場合は、むやみに止めないことが前提です。特に、ガスコンロや開放型のガス湯沸器を使う給湯室は、建築基準法(第28条第3項)で換気設備が求められる火気使用室にあたり、使用中に換気を止めることはできません。

小さな工夫でも効果が出る

設備の大きな更新をしなくても、人感センサーとの連動、在室時間に合わせたタイマー運転、風量を二段階に切り替えられる機種への取り換えなどの方法があります。トイレは使用頻度の差が大きい場所なので、センサーによる制御と相性が良いとされます。なお、全熱交換器で排気の熱を回収する方法もありますが、においや湿気を含むトイレ・給湯室の排気は、熱交換素子を通じてにおいが給気側へ移るおそれがあるため、一般に回収の対象には向きません。

まずは「止まっている時間」を確かめる

最初の一歩は、夜間や休日の巡回のときに、排気ファンが動いているかを音で確かめることです。スイッチの位置や、誰がどの時間に操作しているのかを把握するだけでも、見直しの手がかりになります。効果の大きさは建物ごとに異なるため、見直し前後で電気使用量や室温を比べて確認するのがおすすめです。


想定読者:建物オーナー、施設管理担当者、自治体の設備担当者、設計者

注:本コラムは、建築環境工学・省エネ設計の一般的な知見に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。