省エネの話題は、どうしても空調と照明に集中します。実際その二つで消費エネルギーの大半を占める建物が多いので、それ自体は間違っていません。ただ、ZEBの評価では対象がもう三つあります。換気、給湯、そして昇降機です。今回は、この最後の一つ――エレベーターについて整理します。
ZEBの計算では、昇降機も評価の対象
ZEBの達成度を測るBEI(基準となる一次エネルギー消費量に対する設計値の比率)は、空調・換気・照明・給湯・昇降機の五つの用途を合計して求めます。つまり、エレベーターの仕様も計算結果に反映されるということです。
省エネ計算プログラム(WEBPRO)の標準入力法では、昇降機について台数、積載量、速度、輸送能力係数、そして速度制御方式を入力します。このうち設計で選択の余地が大きいのが、最後の速度制御方式です。選択肢は次のように分かれています。
- 交流帰還制御
- VVVF(電力回生なし)/VVVF(電力回生なし、ギアレス)
- VVVF(電力回生あり)/VVVF(電力回生あり、ギアレス)
同じ台数・同じ積載量でも、どれを選ぶかで計算上の消費エネルギーは変わります。
「電力回生」とは何か
エレベーターは常に電気を使い続けているわけではありません。かごが下降するとき、あるいは人が少ないかごが上昇するとき(つり合いおもりのほうが重い状態)、モーターは発電機のように働きます。この電力を熱として捨てるのではなく、建物の電力系統に戻すのが電力回生です。
VVVFはインバータでモーターの回転を細かく制御する方式で、乗り心地の面でも従来方式より有利です。ギアレス(減速機を介さない直接駆動)は機械的な損失が小さく、機械室レスの機種にも多く採用されています。
制御盤の更新という選択肢
既存建物では「入れ替えは大がかりで、費用も工期も読めない」という声をよく伺います。ただ、昇降路や出入口を残したまま巻上機・制御盤・かご内装などを更新する方式(制御リニューアル、準撤去リニューアルなどと呼ばれます)を選べる場合があります。古い交流帰還制御の機種を最新の制御に置き換えれば、省エネと同時に、乗り心地や地震時管制運転といった安全機能の向上も期待できます。
運用面では、待機時のかご内照明・換気ファンの自動消灯、複数台ある場合の群管理制御、閑散時間帯の一部休止といった工夫があります。動いていない時間のほうが長い設備だけに、積み重ねると効いてきます。
数字の大小より、「入れ忘れない」こと
昇降機が建物全体に占める割合は、多くの用途で空調や照明ほど大きくはありません。それでも計算に含まれる以上、仕様の選び方はBEIに効いてきます。ZEB Ready、Nearly ZEBといった水準をあと少しで満たせるかどうか、という場面では、こうした積み上げが判断を分けることもあります。
エレベーターは建築や空調とは別枠で管理されていることが多く、省エネ改修の検討から漏れがちです。長期修繕計画の中で更新時期が近づいているのであれば、ZEB化の検討と時期を合わせられないか、一度並べて考えてみる価値はあります。
注:昇降機の仕様・更新方式・省エネ効果はメーカーおよび機種、既存設備の状況によって大きく異なります。実際の検討にあたっては、昇降機メーカー・保守会社へのご確認をお願いします。
出典・参考リンク
- 国立研究開発法人 建築研究所「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)」 https://building-energy.tsukuba-kenchiku.jp/