連日の猛暑で、建物の電力使用は冷房が重なる昼過ぎにピークを迎えます。この山を低くする有力な方法の一つが、夜のうちに冷熱を蓄えておき、昼間の冷房に使う「蓄熱式空調システム」です。今回は、その仕組みと利点、導入時の留意点を整理します。

蓄熱式空調とは ― 熱の「貯金」で使う時間をずらす

蓄熱式空調は、熱源機(冷凍機やヒートポンプ)を夜間に運転して氷や冷水の形で熱を蓄え、冷房需要の大きい昼間に取り崩して使う仕組みです。氷として蓄える「氷蓄熱」と、水のまま蓄える「水蓄熱」が代表的で、電気そのものではなく「熱」を貯めるのが特徴です。電力を使う時間を夜へ移す(ピークシフト)ことで、建物の電力需要の山をならすことができます。

電気料金・設備容量・非常時への三つの効果

第一の効果は電力ピークの抑制です。高圧受電の建物では、30分ごとの最大需要(デマンド値)が基本料金を左右するため、昼のピークを夜へ移すことは料金面で有利に働きます。電力会社によっては夜間の単価が割安な料金メニューもあり、運転コストの低減につながる場合があります。第二に、ピーク時の負荷の一部を蓄熱分で賄えるため、熱源機の容量を小さくできる可能性があり、機器更新時のダウンサイジング(容量の適正化)に役立ちます。第三に、水蓄熱槽に蓄えた水は災害時の生活用水などに活用でき、レジリエンス(非常時対応力)の面でも心強い存在です。さらに近年は、太陽光発電の電気が余りやすい昼間にあえて蓄熱するなど、電力系統の状況に合わせた柔軟な運転も注目されています。

導入の留意点とZEBとの関係

一方で、蓄熱槽や氷蓄熱ユニットには設置スペースが必要です。また、蓄えた熱の一部は放熱で失われるため、蓄熱量の計画や運転制御の良し悪しが効果を左右します。効果の程度は建物の負荷パターンや電力契約によって異なるため、検討はまず現状のデマンドデータの確認から始めるのが着実です。断熱や日射遮蔽、高効率設備で負荷そのものを減らすZEB(ゼブ/ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化と、使う時間をずらす蓄熱は、組み合わせることで「山を低く、さらに平らに」できる関係にあります。同じ用途・規模の建物でどのような省エネが実現しているかは、ZEBナレッジ(https://www.zeb.co.jp/knowledge/)の事例データからも確認できます。熱源更新や夏のピーク対策をご検討の際は、選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。


想定読者:建物オーナー・施設管理ご担当者、自治体の公共施設・脱炭素ご担当者、設計者

注:電気料金の体系や夜間割安メニューの有無は電力会社・ご契約により異なります。蓄熱式空調の効果は建物の用途・負荷パターンによって異なるため、導入検討時は個別の試算をおすすめします。

出典・参考リンク

  • 一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター https://www.hptcj.or.jp/
  • 資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/
  • 環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/