梅雨が明けても、日本の夏は湿度との付き合いが続きます。実は冷房のエネルギーは、空気の温度を下げるためだけでなく、湿気を取り除くためにも多く使われています。今回は「潜熱(せんねつ)」という視点から、夏の空調を省エネにする考え方を整理します。
冷房負荷は「温度」と「湿気」の二本立て
空調の負荷には、温度を下げるための「顕熱(けんねつ)」と、湿気を取り除くための「潜熱」があります。高温多湿の日本の夏は、外気や在室者から持ち込まれる水蒸気の処理が負荷の大きな割合を占めます。一般的な空調機は、空気を露点(結露が始まる温度)以下まで深く冷やして水分を結露させる方式のため、除湿のために必要以上に空気を冷やしてしまうことがあります。肌寒いのにジメジメする――夏の会議室でよくある不快感は、温度と湿気を一つの機器でまとめて処理することの難しさの表れです。
「温度」と「湿度」を分けて処理する
そこで近年のZEB(ゼブ/ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)設計で注目されているのが「潜熱顕熱分離空調」という考え方です。湿気の処理は外気処理ユニットやデシカント(乾燥剤で湿気を吸着する仕組み)が受け持ち、室内の温度調整は放射空調や、高めの冷水温度で運転する空調機が担当します。除湿のための深い冷やし込みが不要になるぶん、熱源機を効率のよい温度帯で運転でき、システム全体の消費エネルギーを抑えられます。また、換気で入ってくる湿気そのものを減らす全熱交換器(排気から熱と湿気を回収する換気装置)も、潜熱対策の心強い味方です。
湿度が整うと、設定温度に余裕が生まれる
同じ室温でも、湿度が低いほうが涼しく感じられることはよく知られています。除湿がきちんと効いた空間では、冷房の設定温度に少し余裕を持たせても快適さを保ちやすく、結果として省エネにつながります。まずは室内の温度と湿度を測って現状を知ること、そして改修や設備更新の際には「湿気をどう処理するか」を設計者と話し合ってみることが第一歩です。同じ用途の建物でどのような空調・省エネ技術が採用されているかは、ZEBナレッジ(https://www.zeb.co.jp/knowledge/)の事例データも参考になります。夏の空調の快適性と電気代の両立にお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。
想定読者:建物オーナー・施設管理ご担当者、自治体の公共施設・脱炭素ご担当者、設計者
注:本コラムは一般に公開されている公的情報に基づく概説です。適した空調方式や省エネ効果は、建物の用途・規模・利用状況によって異なります。
出典・参考リンク
- 環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/