近年、庁舎や学校、オフィスビルなどで建物を木でつくる「木造・木質化」の動きが広がっています。木を使うことは脱炭素の文脈で語られることが多いのですが、実は省エネ、そしてZEB(ゼブ/ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とも相性の良い選択です。今回はその理由と、進めるうえでのポイントを整理します。
制度の後押しで進む「都市の木造化」
2010年に制定された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」は、2021年の改正で「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(通称:都市(まち)の木造化推進法)となり、対象が公共建築物から建築物一般へと広がりました。国や自治体と事業者が「建築物木材利用促進協定」を結ぶ仕組みも設けられ、庁舎や学校だけでなく、民間のオフィスや商業施設でも中大規模の木造建築が現実的な選択肢になっています。CLT(直交集成板=ひき板を繊維方向が直交するように重ねて接着した厚い木のパネル)など、部材や工法の進歩も追い風です。
木は「熱を伝えにくい」建材
木材は熱を伝えにくい素材で、熱伝導率はコンクリートの10分の1程度といわれます。躯体からの熱の出入りが小さく、柱や梁が断熱の弱点(熱橋=ヒートブリッジ)になりにくいのが特長です。また木造の壁は柱の間に断熱材を充填しやすく、外皮(外壁・屋根・窓など建物の外周部)の性能を確保しやすい構造でもあります。ZEBの評価は一次エネルギー消費量の削減率で行われ、構造の種類は問われません。断熱・気密を丁寧に施工した木造は、ZEBの土台となる外皮性能を得やすい構造といえます。
進めるうえでの留意点
一方で、規模や用途によっては耐火・防火の計画が必要になり、コストや設計に影響します。また木材は湿気の影響を受けやすいため、断熱・気密と併せた防湿・通気の設計が欠かせません。夏の日射遮蔽や高効率設備といった省エネの基本は、構造にかかわらず共通です。木造だから自動的に省エネになるわけではなく、「木の長所を活かす外皮設計」と「設備の工夫」の組み合わせが成果を左右します。
建物の脱炭素を「両輪」で
木材は成長の過程でCO2を吸収して炭素を蓄えるため、木の建物は「街の中の炭素の貯蔵庫」とも呼ばれます。運転時のエネルギーを減らすZEBと、建材に由来するCO2を減らす木造・木質化は、建物の脱炭素を両輪で支える関係です。庁舎・学校の建て替えや社屋の新築をご検討の際は、「木造×ZEB」という選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか。同じ用途・規模の建物でどのような省エネ技術が採用されているかは、ZEBナレッジ(https://www.zeb.co.jp/knowledge/)の事例データも参考になります。お気軽にご相談ください。
想定読者:建物オーナー・企業の施設ご担当者、自治体の庁舎・公共施設ご担当者、設計者
注:本コラムは一般に公開されている公的情報に基づく概説です。木造化の可否や耐火要件、省エネ効果は、建物の規模・用途・立地によって異なります。
出典・参考リンク
- 林野庁「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:都市(まち)の木造化推進法)」 https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/
- 環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/