省エネをこれから始めたいというご相談で、最初にお伝えしているのは「まず測りましょう」ということです。もっとも、測ってはいるものの活かしきれていない建物も少なくありません。分かれ目になるのが、設計段階でほぼ決まる「計量計画」――どこを、どんな区分で計測しておくか、という設計です。

建物全体の使用量だけでは、打ち手が決まらない

多くの建物では、電力会社の請求書や主幹メーターによって建物全体の使用量は把握できています。しかし「先月より増えた」ことは分かっても、原因が空調なのか照明なのか、特定のフロアやテナントなのかまでは分かりません。原因が絞り込めなければ、対策は勘に頼ることになります。

建築物の省エネ性能の計算では、エネルギーの用途を空調・換気・照明・給湯・昇降機といった区分で扱います。運用データも近い区分で見られるようにしておくと、設計時の想定と実際とを突き合わせやすくなります。

計量計画は「後から」が高くつく

用途ごとにエネルギーを把握するには、分電盤の回路を用途別に整理し、必要な箇所に計測器を設ける必要があります。建物が完成してからでは、盤の改造や配線のやり直しを伴い、費用も手間も大きくなりがちです。設計段階であれば、回路の振り分けをあらかじめ決めておくだけで済むことも少なくありません。

どこまで細かく測るかは、建物の規模と管理体制に見合った形で決めます。細分化しすぎても、見る人がいなければ活かせません。まずは主要な系統――空調熱源、照明・コンセント、給湯、フロアや用途ごとの区分――から始めるのが現実的です。

集めたデータを「読む」ための視点

BEMS(ビル・エネルギー管理システム=エネルギーの使用状況を計測・記録し、制御に活かす仕組み)で集めたデータは、次のような見方をすると発見があります。

  • 夜間・休日の使用量:誰もいない時間帯に流れ続けている分は、運転スケジュールの見直しで減らせることが多い部分です。
  • 時系列の変化:前年同月との比較から、季節の変わり目の運転切り替えの適否が見えてきます。
  • 面積あたりの原単位:他の建物や一般的な水準と比べる、共通のものさしになります。

なお、補助事業を活用した場合には、運用段階のエネルギー使用状況の報告を求められることがあります。省エネ法に基づく報告が必要な事業者であればなおさら、日常的にデータが整っていること自体が実務の負担軽減につながります。

測ることは、次の投資の根拠になる

計測データは、省エネ改修や設備更新の根拠にもなります。「この系統でこれだけ使っている」という実績があれば、更新の効果を具体的に見積もることができ、社内の稟議や議会での説明もしやすくなります。

新築でも改修でも、計量計画は早い段階で検討するほど選択肢が広がります。何をどこまで測るべきかお迷いの際は、建物の用途や管理体制に合わせてご提案しますので、お気軽にご相談ください。


想定読者:建物オーナー・施設管理ご担当者、自治体の脱炭素ご担当者、設計者

注:本コラムは一般に公開されている公的情報および当社の実務経験に基づく概説です。必要な計測の範囲や報告義務の有無は、建物の規模・用途・活用する制度によって異なります。

出典・参考リンク

  • 環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/
  • 関連コラム「建てて終わりにしない ― ZEBの性能を『運用』で活かし続けるコツ」(2026年6月30日)