建物の省エネというと、空調や照明に目が向きがちです。しかし電気室の中には、休日も夜間も止まることなく、静かに電気を消費し続けている機器があります。受変電設備の変圧器(トランス)です。2026年度から新しい省エネ基準が始まったこのタイミングで、あらためて足元を見直してみたいと思います。

負荷がゼロでも損失は消えない

変圧器の損失は、大きく二つに分かれます。ひとつは電気を流したときに巻線で発生する負荷損(銅損)。もうひとつが、鉄心の磁化にともなって生じる**無負荷損(鉄損)**です。

このうち無負荷損は、負荷の大きさに関係なく、変圧器に電圧がかかっている限り常に発生します(出典:日立産機システム「トップランナー制度とは?」)。つまり、誰も建物にいない深夜も、閉庁日も、電源を入れっぱなしにしている限り消費され続ける電気です。

建物全体で見れば数パーセントの話かもしれません。ただ、これは「年間8,760時間ずっと」の数パーセントです。運用の工夫では減らしようがない、機器の性能そのものに固定された損失だという点が、他の省エネ項目と大きく違うところです。

2026年度、基準が新しくなった

変圧器は省エネ法のトップランナー制度(メーカーに機器の効率向上を求める仕組み)の対象機器です。これまで2006年度(油入)・2007年度(モールド)、そして2014年度を目標年度とする基準が設けられてきましたが、第三次判断基準の目標年度が2026年度とされ、今年度から新しい基準の変圧器へと切り替わっていきます。

JEMA(日本電機工業会)によれば、新基準の変圧器はJIS C 4304(1981)規格値との比較で約46%、第一次判断基準(JIS C 4304(2005))との比較でも約26%のエネルギー消費効率の改善が期待できるとされています。

注目したいのは同じ資料の推計です。国内の変圧器稼働台数は2021年度時点で約386万台。うち更新推奨時期の20年を超えた2001年以前の機器が約221万台、**全体の57%**を占めるとされています。つまり多くの建物で、20年以上前の効率のまま電気が流れ続けている可能性があります。

オーナー・施設管理者ができること

まず確認したいのは、キュービクル内の変圧器の製造年です。銘板に記載があります。2001年以前であれば、更新検討の対象と考えてよいでしょう。

次に負荷率です。トップランナー基準では、500kVA以下は40%、500kVA超過は50%を基準負荷率としています。裏を返せば、実負荷がこれを大きく下回る変圧器は、無負荷損の割合が相対的に重くなります。テナント退去や設備更新で当初想定より負荷が減った建物、統廃合で使われなくなった系統がある施設では、変圧器の統合や、不要な系統の切り離しが有効な場合があります。

変圧器の更新は、法定点検や停電作業のタイミングと合わせて計画すると、建物への影響を最小限にできます。空調更新のような大きな話ではありませんが、一度替えれば20年効き続ける、静かで確実な省エネです。


注:変圧器の更新・統合・系統の切り離しは、保安規程および電気主任技術者の管理範囲に関わります。実施にあたっては必ず電気主任技術者・保安管理業者にご相談ください。個別建物での削減量は負荷条件により異なります。

出典・参考リンク