高効率の熱源に更新したのに、思ったほど電気代が下がらない。奥の部屋だけいつまでも暑い。そんな相談をいただくことがあります。原因が機器ではなく、熱を「運ぶ経路」にあることは珍しくありません。今回は、天井裏や機械室で静かに起きているロスの話です。
熱は運んでいる間に減る
熱源でつくった冷水・温水は配管で空調機へ、空調機でつくった冷風・温風はダクトで各室へ運ばれます。この経路の途中で周囲に逃げた熱は、そのまま熱源の余分な負荷になります。
配管やダクトが通るのは、天井裏、パイプシャフト、機械室、屋上といった空調していない場所です。真夏の天井裏は室内よりかなり高温になりますから、冷水管や冷風ダクトとの温度差は大きく、保温が傷んでいれば逃げる量もそれだけ増えます。機器のカタログ効率がどれだけ高くても、運ぶ途中で失われた分は取り戻せません。
現場で見つかりやすい三つのサイン
結露と水滴。 冷水配管まわりの水滴、保温材の濡れ、天井材のシミは、保温材の欠損や防湿層の破れを示す代表的なサインです。しかも保温材は濡れると断熱性能そのものが落ちるため、放っておくとロスが増えていきます。設備の不具合というより先に、建物の傷みとして表れることが多い箇所です。
バルブや継手まわりの露出。 直管部はきちんと保温されていても、弁類・フランジ・配管の支持金物は保温が省略されていることがあります。面積は小さくても、そこだけ熱の出入り口になります。改修では、点検で開け閉めが必要なバルブに脱着できる保温カバーを使う方法もあります。
屋外部の外装の劣化。 屋上の露出配管やダクトは、外装(ラッキング)が破れて雨水が入ると内部の保温材が濡れ、乾かないまま性能を失います。屋上に上がる機会があれば、機器本体だけでなく配管の外装も見ておきたいところです。
「漏れ」も同じくらい効く
保温と並んで見落とされやすいのが、ダクト接続部からの漏気です。送った空気が途中で漏れれば、その分は室に届きません。ファンの搬送動力は同じだけ使いながら、効果だけが目減りします。フレキシブルダクトが潰れていたり、きつく曲げられていたりする場合も、抵抗が増えて同様のことが起こります。「風が来ない室がある」ときは、機器の能力不足と決めつける前に、経路側を疑ってみてください。
天井を開ける工事に、あわせて見る
この種の点検が難しいのは、対象が普段見えない場所にあることです。裏を返せば、他の工事で天井を開けるときが確認の好機になります。空調機の更新、照明のLED化、内装改修――同じ天井裏に手が入るタイミングで、配管・ダクトの保温状態もあわせて見ておく。保温の補修は設備更新に比べれば費用も工期も小さく、更新した高効率機器の性能を素直に引き出すための下ごしらえになります。
省エネというと、機器を新しくすることに目が向きがちです。ただ、つくった熱を減らさずに届けることは、それと同じくらい確実に効きます。改修をご検討の際は、機器表だけでなく経路もあわせてご相談ください。
想定読者:建物オーナー、施設・設備管理のご担当者、自治体のZEB・脱炭素ご担当者、設計者
参照元:空調設備の一般的な設計・保守実務(配管およびダクトの保温、結露防止、ダクト漏気)に基づく解説。特定の製品・数値データは引用していません。