庁舎、学校、図書館、体育館――。自治体が抱える公共施設は、まちのエネルギー消費の大きな部分を占めています。光熱費の高騰や脱炭素の要請を受け、これらの建物をどう省エネ化するかは、多くの自治体に共通する課題です。本コラムでは、公共施設のZEB(ゼブ/ネット・ゼロ・エネルギー・ビル:省エネと創エネを組み合わせ、使うエネルギーを実質ゼロに近づけた建物)化が、なぜ今、自治体にとって重要なのかを整理します。

業務部門の脱炭素は、まだ道半ば

環境省によると、オフィスや公共施設などの「業務部門」が出すCO2は、日本全体の約2割を占めます。しかも1990年度以降、産業部門の排出が24%減ったのに対し、業務部門は48%も増えました。建物の省エネは、国全体の脱炭素を左右する分野なのです。

国はこれを受け、2030年に新築する建築物でZEB基準の省エネ性能を確保することを目標に掲げ、国や自治体などの公的機関が「率先して」取り組むよう求めています。さらに2025年4月からは、原則すべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務づけられました。公共施設も、もちろん例外ではありません。

自治体の公共建築物は「伸びしろ」が大きい

環境省の資料によると、地方自治体の公共建築物は、全国の非住宅建築ストック(既存の建物の延床面積の合計)の約23%を占めます。ところが、そのZEB化率はわずか約0.5%にとどまり、民間の約2.4%を下回っています。裏を返せば、公共施設には省エネの「伸びしろ」が大きく残されている、ということです。

全国知事会も2022年に、都道府県が新築する建物でZEB Ready(再生可能エネルギーを除いて50%以上の省エネを達成した、ZEBの一歩手前の段階)相当を目指すと宣言しました。率先して動く自治体の輪は、着実に広がっています。

まずは「更新・改修のタイミング」をとらえる

とはいえ、すべての施設を一度にZEB化するのは現実的ではありません。国の地域脱炭素ロードマップも、施設の更新や改修の機会をとらえてZEB化を進めることを求めています。老朽化した庁舎の建て替えや、空調・照明設備の更新は、建物の省エネ性能を一段引き上げる絶好のタイミングです。

公共施設のZEB化は、光熱費の削減にとどまらず、災害時の電源確保や、住民に向けた環境配慮のメッセージにもつながります。どの施設から、どう手をつけるか――。施設台帳の整理や計画づくりの段階から、お気軽にご相談ください。


想定読者:自治体の公共施設・脱炭素ご担当者、建物オーナー、設計者

参照元:環境省「ZEB PORTAL」ZEB普及目標とロードマップ(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/02.html)/環境省「公共建築物のZEB化」関連資料(自治体職員向け)/全国知事会「カーボンニュートラル・地球温暖化対策に向けた行動宣言」(2022年7月)/国土交通省・経済産業省「建築物省エネ法」関連資料(2025年4月施行)