ZEBを検討すると、設計段階で「この建物は一次エネルギーを大きく削減できます」という計算結果をご覧いただくことになります。ところが、建物オーナーや自治体のご担当者から多くいただくのが「計算上はそうでも、実際に使い始めたら本当にそこまで減るのか」という不安です。シリーズ第5回でご紹介する「ZEB実績データ分析」は、この問いに公開された実測データで答えるツールです。

設計値と実測値を突き合わせる

このツールは、環境共創イニシアチブ(SII/国のZEB補助事業を運営する団体)の「ZEB実証事業」で公開された運用データを使っています。同じ建物について、設計時に計算した一次エネルギー消費量(冷暖房・換気・照明・給湯などに使うエネルギーを石油換算で合計したもの)の予測値と、竣工して実際に使った後に計測された消費量とを並べて比較できるのが特徴です。

机上のシミュレーションと現実の運用実績を、第三者がまとめた公開データで突き合わせられる――ここに大きな意味があります。

実測が示していること

公開データを見ると、ほとんどの建物で設計時の計算値以上の省エネが達成されています。つまり、設計段階の一次エネルギーシミュレーションは現実を楽観的に描いた「絵に描いた餅」ではなく、運用後にむしろ上振れすることも多い、十分に信頼できる予測だということです。もちろん建物の使い方や運用の工夫によって差は出ますが、全体としてこの傾向が確認できることは、投資判断の安心材料になります。

活用のヒント

オーナーや自治体のご担当者には、「設計上これだけ減ります」という説明に、「全国の実証事業でも実際に達成されている」という客観的な裏づけを添えられます。議会や予算の場で説明する際にも説得力が増します。設計者の方にとっては、自らのシミュレーション結果が妥当であることを、相手に伝わる形で示す材料になります。

省エネ効果は設計で終わりではなく、運用段階の工夫でさらに伸ばせます。実測データの読み方や運用改善の進め方についても、お気軽にご相談ください。

次回は本シリーズの最終回として、既存建築物のZEB化改修の費用対効果を試算する「既存建築物ZEB化改修経済性分析ツール」を取り上げます。


想定読者:建物オーナー、自治体のZEB・脱炭素ご担当者、設計者

参照元:環境共創イニシアチブ(SII)「ZEB実証事業」公開データ