ZEB化を検討するとき、多くの方が最初に気にされるのが「補助金は使えるのか」「いつ、どこに申請するのか」という点です。2026年度(令和8年度)も、国はZEB(ゼブ/ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及を後押しする複数の補助制度を用意しています。ただし制度は省庁ごとに分かれ、公募の時期も限られているため、全体像と段取りを早めに押さえておくことが肝心です。本コラムでは、施主・建築関係者・経営層の視点で、2026年度の主な支援制度の地図と申請の進め方を整理します。

なぜ「補助金」から逆算して考えるのか

ZEBは、高い断熱・省エネ性能で使うエネルギーを大きく減らし、太陽光発電などでエネルギーを創ることで、建物が一年間に消費する一次エネルギー(冷暖房・照明・給湯などに使うエネルギーを石油換算で合算したもの)を大幅に削減した建築物です。性能を高めるぶん初期投資は通常の建物より増えますが、その差額の一部を補助金で軽減できる場合があります。

ここで重要なのは、補助金には「公募期間」という締切があることです。たとえば経済産業省と連携して実施される2026年度のZEB実証事業は、一次公募が2026年5月12日から6月11日まで、二次公募が7月17日から8月17日までと、あらかじめ期間が決まっています。設計が固まってから補助金を探し始めると、その年度の公募に間に合わないことも少なくありません。だからこそ、企画の初期段階で「どの制度が使えそうか」を逆算しておくと、計画全体がスムーズに進みます。

補助金の前提になる「ZEBの区分」を知る

多くのZEB補助金は、建物がどの程度の省エネ性能に達するかによって対象や条件が変わります。その物差しになるのがBEI(ビー・イー・アイ=建物の設計上の一次エネルギー消費量を、国が定める基準値で割った指標)で、値が小さいほど省エネ性能が高いことを意味します。ZEBは、このBEIなどに応じて次の4区分に分かれています。

「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」は、再生可能エネルギーを除いて50%以上の省エネ(BEIが0.5以下)を達成した、ZEBの一歩手前の段階です。「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」は、省エネで50%以上を確保したうえで、創エネを含めて75%以上の削減を達成した状態を指します。「『ZEB』」は、省エネ50%以上に加え、創エネも含めて100%以上の削減(正味でゼロ以下)を実現したもっとも高い水準です。そして「ZEB Oriented(ゼブ・オリエンテッド)」は、延床面積が大きく完全なZEB化が技術的・費用的に難しい大規模建物(おおむね10,000平方メートル以上)向けの区分で、用途に応じて30%または40%以上の省エネに加え、省エネ余地のある先進技術の導入などを求めるものです。

自社の建物がどの区分を狙えるかによって、使える制度や補助の手厚さが変わります。まずは目標とする区分を見定めることが、補助金活用の出発点になります。

2026年度の主な支援制度マップ

ZEBに使える国の補助制度は、大きく省庁ごとに分かれています。代表的なものを押さえておきましょう。

環境省は「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」を実施しており、新築・既存の双方のZEB化を支援しています(令和7年度補正予算額は約48億円)。補助率や上限額は事業区分や延床面積によって異なり、計量・計測によるエネルギーデータの収集体制の整備や、ZEBプランナーの関与などが要件として求められるのが特徴です。具体的な率や上限は年度ごとの公募要領で必ず確認してください。

経済産業省は、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)を通じて「ZEB実証事業」を実施しています。2026年度は、新築・改修のZEB化を支援する「ZEB化事業」、テナントビルの省エネを対象とする「既存テナント事業」、評価手法が確立していない先進技術を試す「未評価技術単独事業」などの類型が用意されています。あわせて、ZEB化に向けた検討段階を後押しする「ZEB化診断・計画策定支援事業」も設けられています。

国土交通省は「住宅・建築物省エネ改修推進事業」などを通じて、既存建築物の省エネ改修を支援しています。このほか、地方自治体が独自の上乗せ補助を用意している場合もあり、国の制度と組み合わせられることもあります。「うちの建物は新築ではないから」とあきらめず、改修向けの制度まで含めて探すことが大切です。

申請でつまずかないための段取り

制度の目星がついたら、次は申請の準備です。近年の国の補助金は、電子申請システム「Jグランツ」で受け付けるものが増えています。Jグランツの利用には「GビズIDプライム」というアカウントが必要で、その取得には2週間程度かかる場合があります。公募開始を待ってから準備を始めると間に合わないことがあるため、アカウントは早めに取得しておくと安心です。

もう一つの鍵が、ZEBプランナーの存在です。ZEBプランナーは、ZEBの設計や導入を支援する専門事業者としてSIIに登録された者で、多くのZEB補助金で関与が要件とされています。SIIのサイトでは登録事業者を検索でき、計画の初期から相談しておくと、補助要件を満たす設計や申請書類の作成がスムーズになります。

スケジュール面では、公募から交付決定までの流れを逆算しておくことが欠かせません。前述のとおり2026年度のZEB実証事業は、一次公募が6月中旬で締め切られ、交付決定は7月中旬の予定です。二次公募が実施される場合は7月から8月の受付となります。なお、一次公募の採択状況によっては二次公募が実施されないこともあるため、最新の公募情報はSIIのホームページで確認してください。いきなり大規模なZEB化に踏み切るのが難しい場合は、まず診断・計画策定の支援事業を活用して足場を固めるという進め方もあります。

まとめ ― 早めの「制度の地図づくり」を

2026年度も、国はZEB化を後押しする複数の補助制度を用意しています。省庁ごとに制度と公募時期が分かれているからこそ、企画の初期段階で「どの区分を狙い、どの制度を、いつ申請するか」という地図を描いておくことが成功の近道です。GビズIDの取得やZEBプランナーへの相談など、できる準備から早めに着手してみてはいかがでしょうか。


想定読者:建物オーナー、自治体のZEB・脱炭素ご担当者、設計者・施工者、経営層

注:本コラムは一般に公開されている公的情報に基づく概説です。補助率・上限額・要件・締切などの詳細は、必ず各制度の最新の公募要領でご確認ください。

出典・参考リンク

  • 環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)支援制度」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/hojo/
  • 環境省「ZEBの定義」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html
  • 一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)「令和8年度 ZEB実証事業/ZEB化診断・計画策定支援事業」 https://sii.or.jp/zeb08/
  • SII「令和8年度 ZEB実証事業|補助事業(実証)公募情報」 https://sii.or.jp/zeb08/jissho_public.html
  • 経済産業省 資源エネルギー庁「省エネルギー政策(支援制度)」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/support/index.html
  • 国土交通省「令和7年度 住宅・建築物省エネ改修推進事業」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/shienjigyo_r7.html
  • Jグランツ(電子申請) https://www.jgrants-portal.go.jp/ / GビズID https://gbiz-id.go.jp/