既存の建物をZEB化(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル:省エネと創エネを組み合わせ、使うエネルギーを実質ゼロに近づけた建物)へ改修するとき、オーナーや自治体のご担当者が最初に直面するのが「そもそも、その投資は割に合うのか」という問いです。新築と違い、既存改修は建物ごとに条件がばらばらで、検討の入口で立ち止まってしまいがちです。本シリーズ最終回でご紹介する「既存建築物ZEB化改修経済性分析ツール」は、この最初の見極めを後押しするツールです。

「進めるか・調べるか」を決めるための簡易試算

ZEB化改修の本格的な検討には、現地調査や詳細なシミュレーションが欠かせません。しかしその手前に、「うちの建物で検討を進める価値があるのか」をまず知りたい段階があります。本ツールは、建物の条件を入力すると、ZEB化改修の経済性をその場で簡易にシミュレーションできます。専用のソフトは不要で、ブラウザ上から利用できます。

経済性は「投資」と「回収」のバランスで見る

改修の経済性は、ざっくり言えば、断熱強化や高効率設備などにかかる初期投資と、それによって毎年減っていく光熱費(運用コスト)とのバランスで決まります。年々の削減額が積み上がり、何年で初期投資を回収できるか――いわゆる回収年数――が一つの目安になります。補助金を使えるかどうかも、この見え方を大きく左右します。本ツールはこうした要素を踏まえた概算を手早く示してくれるため、関係者の間で「次に何を調べるべきか」という共通認識をつくる出発点になります。

あくまで「参考情報」として

ひとつ大切な注意があります。簡易試算の結果は、あくまで参考情報です。実際の費用対効果は、建物の現状、改修の仕様、エネルギー価格や補助制度の動向によって変わります。本ツールの数字を意思決定の唯一の根拠とするのではなく、「本格検討に進むかどうかの判断材料」として位置づけてください。

活用のヒント

建物オーナーや自治体のご担当者には、社内・庁内で改修の話を切り出す際の「たたき台」として便利です。ゼロから見積もりを取る前に、おおよその規模感を関係者と共有できます。設計者の方にとっては、オーナーとの初回の対話で、改修の方向性を一緒に描くきっかけになります。

概算で手応えを感じたら、次は現地調査を踏まえた詳細な検討へ。どこから手をつければよいか迷われたら、お気軽にご相談ください。

本シリーズでは、ZEBナレッジの各ツールを一巡してご紹介してきました。次回からは、ZEB・省エネにまつわる身近なテーマを、引き続きお届けします。


想定読者:建物オーナー、自治体のZEB・脱炭素ご担当者、設計者