連日の猛暑で、園庭遊びやプール活動を控える判断が続く季節になりました。保育の現場では暑さ指数(WBGT)を測りながら、一日の大半を冷房の効いた保育室で過ごす日も珍しくありません。冷房は止められない、でも光熱費は年々重くなる――。本シリーズで取り上げてきた病院や介護施設と同じ構図が、保育園・認定こども園にもあります。今回は、子どもの育つ環境の質を落とさずに省エネを進める考え方を整理します。
評価のものさし
建築物省エネ法の簡易な計算法(モデル建物法)では、保育所や認定こども園は「幼稚園」のモデル建物で評価されるのが一般的です。省エネの度合いはBEI(設計一次エネルギー消費量を基準値で割った指標。小さいほど省エネ)で表し、空調・換気・照明・給湯・昇降機の5つの設備が評価の対象になります。
小さく低い建物は、『ZEB』に届きやすい
保育施設は平屋や2階建てが中心で、延床面積のわりに屋根が広い建物です。屋根に太陽光発電を載せれば、使うエネルギーに見合う創エネを確保しやすく、省エネと創エネで年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロ以下にする『ZEB』(ゼブ)に手が届きやすい建物種別といえます。環境共創イニシアチブ(SII)が公表するZEB事例にも幼稚園・保育所の登録があり、当社の「ZEBナレッジ(ZEB技術の分析)」で用途別に性能値を確認できます。
効かせる順番は、断熱・日射遮蔽から
子どもは大人より体温調節機能が未発達で、背が低いぶん床面近くの熱環境の影響も受けやすい存在です。まず外皮の断熱と窓の日射遮蔽で「冷房が効きやすい建物」にしてから、設備の高効率化に進むのが定石です。断熱がしっかりした園舎は、午睡(お昼寝)時の温度ムラが小さく、万一の停電時にも室温の上昇が緩やかになります。
換気と給湯も、保育ならでは
感染症対策のために換気量は確保したい。しかし夏や冬に外気をそのまま入れれば、冷暖房の負荷が跳ね上がります。全熱交換型の換気(排気の熱を給気に移す仕組み)なら、空気の質と省エネを両立できます。給食の調理やシャワー・沐浴で使うお湯にはヒートポンプ給湯が有効です。照明はLED化に加えて昼光をうまく取り入れれば、明るさとまぶしさに配慮しながら消費を抑えられます。
建て替え・大規模修繕が好機
省エネ改修を単独で行うのは費用面のハードルが高いものです。園舎の建て替えや老朽化対策など「もともと予定されている工事」に断熱強化や高効率設備を織り込むのが、最も費用対効果の高い進め方です。計画の内容によっては、国や自治体の支援制度を活用できる場合もあります。
まずは園の電気・ガスの使用量から。どの季節に何へエネルギーを使っているかを知ることが、保育の質を守りながら無理なく省エネを進める出発点になります。
想定読者:保育園・認定こども園を運営する社会福祉法人・学校法人の経営者、こども施設整備に関わる自治体担当者、保育施設を手がける設計者
参照元:環境省 ZEB PORTAL「ZEBの定義」(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html)、環境共創イニシアチブ(SII)「ZEBリーディング・オーナー一覧(ZEB事例)」。モデル建物法の用途区分は個別の計画条件により判断が分かれる場合があるため、具体の設計・申請にあたっては所管行政庁・省エネ適判機関等にご確認ください。