7月末は、省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)に基づく定期報告書の提出期限でした。ご担当された方は、ようやくひと段落というところかもしれません。
ただ、あの書類は行政に出すためだけのものではありません。事業者として1年間に使ったエネルギーを、すべて棚卸しした唯一の資料です。せっかく集めた数字を来年度の一手に変えるなら、8月は良いタイミングです。
定期報告は「事業者全体の燃費台帳」
事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算で1,500kL以上になると、特定事業者として指定され、毎年7月末までに前年度分の定期報告書を提出することが求められます。報告するのは、燃料・熱・電気の使用量を原油換算した値と、エネルギー消費原単位、そして延床面積や生産量といった「エネルギーの使用量と密接な関係を持つ値」です。中長期的に年平均1%以上の原単位低減が努力目標とされています。
複数の施設をお持ちであれば、この過程で施設ごとの使用実績が一か所に集まっているはずです。ここが出発点になります。
クラス分けは「健康診断の結果」として読む
定期報告を提出した事業者は、S・A・B・Cの4段階で評価されます(事業者クラス分け評価制度)。Sクラスの目安は、直近5年度間の平均原単位変化が年1%以上低減していること、またはベンチマーク指標の目指すべき水準を達成していることです。
見るべきは判定そのものより「なぜその結果になったか」です。原単位が下がらない理由を稼働時間や利用者数の変動で説明できないとき、原因は建物側にある可能性が高くなります。
運用で下がる分と、下がらない分
設定温度の見直し、運転時間の調整、消し忘れの削減。こうした運用改善で削減できる幅は、多くの場合そう大きくありません。ひととおり手を尽くしても原単位が横ばいなら、次は設備そのもの、あるいは外皮(断熱・窓)の性能に踏み込む段階です。老朽化した熱源機、断熱のない屋根、単板ガラスの窓——これらは運用ではどうにもなりません。
ここで定期報告のデータが効いてきます。改修の効果を説明するには、改修前の実績値が要ります。毎年積み上げてきた報告書は、そのまま最良のベースラインになります。
8月にやっておきたい三つのこと
- 施設別の原単位を並べ、同じ用途・規模なのに差が大きい施設を洗い出す
- 差の理由が説明できない施設から順に、現地を確認する
- 中長期計画書に書いた内容と、来年度の予算・改修計画を突き合わせる
補助金の公募は年度前半に集中する傾向があります。来年度に何かを動かすなら、秋のうちに検討を始めておくと選べる手が増えます。
報告書を「振り返りの道具」として使えるようになると、省エネは義務ではなく計画の話に変わります。施設ごとの数値の読み解きや改修計画の立て方についても、お気軽にご相談ください。
想定読者:建物オーナー・施設管理のご担当者、自治体の施設・環境ご担当者、設計者
参照元:省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)における特定事業者の指定要件(事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算1,500kL以上)、定期報告書の提出期限(毎年7月末日)、エネルギー消費原単位に関する努力目標、および事業者クラス分け評価制度(S・A・B・Cの4段階/Sクラスの評価基準)は、資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」の公表内容による。
- 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト「事業者の区分と義務」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/classification/
- 同「定期報告書・中長期計画書」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/report/
- 同「事業者クラス分け評価制度」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/institution/
備考:報告義務の有無、様式、提出先は事業者の区分・業種により異なります。実際の手続きにあたっては所管の経済産業局および資源エネルギー庁の最新の案内をご確認ください。補助金の公募時期に関する記述は一般的な傾向であり、各年度の制度により異なります。