明日から各地で酷暑日の予報が出ています。空調が効いている室内なら安心——と思われがちですが、窓ぎわだけは事情が違います。当社の「室内快適性シミュレーション」を使い、外気温40℃の西向きの部屋で、窓まわりの仕様がどれだけ体感を左右するかを試算しました。
室温28℃でも、窓ぎわのWBGTは上がる
暑さの感じ方は気温だけで決まりません。気温・湿度・気流・放射(輻射)・着衣量・代謝量の6要素が関わります。なかでも見落とされやすいのが放射熱です。日射で熱くなった窓ガラスは、室内に向かって熱を放ち続けます。空調が空気温度を28℃に保っていても、窓ぎわに座る人の体感(平均放射温度)は局所的に上がり、熱中症の危険度を示すWBGTが押し上げられます。
試算の条件
岡山市・8月の晴天日、外気温40℃、西向きの窓(幅20m×高さ1.6m)、RC造の屋上階、室温28℃・湿度70%・気流0.15m/s、軽装で着座——という設定です。日中のピーク時刻はアプリが自動選択しています。
結果:ガラスを替えると2段階下がる
窓ぎわ(窓から0.3m)の推定WBGTは次のとおりでした。
| 窓の仕様 | 縦ルーバーなし | 縦ルーバーあり |
|---|---|---|
| 単板ガラス | 31.2℃(危険) | 28.6℃(厳重警戒) |
| 日射遮蔽型Low-E複層 | 27.4℃(警戒) | 26.5℃(警戒) |
同じ部屋でも奥側は25.3℃程度。単板ガラスでは、窓ぎわと奥とで約6℃もの差がついていました。ガラスの室内側表面温度も、単板の37.4℃に対し日射遮蔽型Low-Eでは35.4℃、縦ルーバーを併用すると33.9℃まで下がります。
平面ヒートマップ(室を上から見た図。左端が窓面)で並べると、対策が一段ずつ効いていく様子が色で分かります。




読み取れる3つのこと
まずガラス。 単板から日射遮蔽型Low-E複層に替えるだけで31.2℃→27.4℃。「危険」から2段階下の「警戒」まで下がりました。窓まわりで最も効く一手です。
縦ルーバーは西日に効く。 窓の前面に鉛直の羽根を並べる縦ルーバー(今回は奥行0.25m・ピッチ0.25m・羽根厚0.10m)は、低い角度から射し込む西日を横から遮ります。単板ガラスのままでも2.6℃下がりました。ガラスの交換が難しい既存建物で、外側から手を打てるのが利点です。
併用が最も低い。 日射遮蔽型Low-Eに縦ルーバーを加えた26.5℃が最良でした。
なお「断熱」と「日射遮蔽」は別の性能です。同じLow-E複層でも、日射取得型は日射熱取得率η=0.51、日射遮蔽型は0.32。U値が同じでも入ってくる日射量が違うため、体感には差が出ます。冷房期の窓は、断熱性能だけでなくηの値を見て選ぶことが大切です。
実務へのヒント
既存ビルなら、西面・南西面から優先的に手を入れるのが費用対効果の面で有利です。ガラス交換が難しい場合は、外付けの縦ルーバーや内窓の追加も選択肢になります。新築・改修の設計段階であれば、方位ごとにガラスの仕様を使い分けることをおすすめします。
ご自身の建物の条件で試算をご希望の方は、お気軽にご相談ください。
ご利用上の注意と試算条件
本試算は当社「室内快適性シミュレーション」による定常・ピーク時の簡易評価であり、実環境を保証するものではありません。表示されるWBGTは推定値(参考値)です。労働安全衛生規則第612条の2に係る暑熱環境の該当性判断には、JIS B 7922適合のWBGT指数計による現場実測が必要で、本試算はその代替となりません。WBGT区分は一般的な指針値であり、着衣・代謝・暑熱順化・個人差により実際のリスクは変動します。
試算条件:岡山(METPV-20)/8月・晴天日(多照年)/外気温40℃/方位+90°(西)/RC造・屋上階/階高3.5m・天井高2.8m/窓 幅20.0m×高さ1.6m(窓台0.6m、実効窓面積率45.7%)/室温28℃・相対湿度70%・気流0.15m/s/着衣0.5clo・代謝1.1met・着座・評価高さ1.1m/庇なし。縦ルーバーは奥行0.25m・ピッチ0.25m・羽根厚0.10m。η・U値は建築研究所BECC非住宅(H30)の公式ガラス物性、日射データはNEDO「METPV-20 日射量データベース」による。