省エネの話題は、空調・照明・換気に集まりがちです。しかし建物によっては、給湯(お湯をつくり、届ける)が消費エネルギーの大きな塊になります。とくにホテル、病院、福祉施設、スポーツ施設、社員寮のように「湯を大量に、長時間使う」用途では、給湯の見直しが効きます。今回は、給湯の省エネをどこから考えるかを整理します。
まず「どれだけ使っているか」を疑う
給湯設備は、竣工時に想定した最大使用量に合わせて選定され、その後の使われ方が変わっても、そのまま運転され続けていることが少なくありません。稼働率が下がった、浴室の利用時間が短くなった、厨房の運用が変わった――こうした変化があっても、貯湯槽(お湯をためておくタンク)の設定温度や加熱のスケジュールは昔のまま、というケースです。
給湯の省エネは、次の三段階で考えると整理しやすくなります。
- 使う量を減らす(節湯水栓、シャワーヘッド、配管の保温強化)
- つくり方を効率化する(高効率な熱源への更新)
- 捨てている熱を拾う(排熱・排湯の回収)
順番が大切です。使用量そのものが減れば、必要な熱源の容量も小さくなり、更新費用まで下がります。
つくり方を変える ― ヒートポンプ給湯という選択肢
熱源の更新では、業務用ヒートポンプ給湯機(空気中の熱をくみ上げてお湯をつくる機器)が有力な選択肢になります。燃焼でお湯を沸かすボイラーが「投入した燃料の熱量以上は出せない」のに対し、ヒートポンプは大気の熱を利用するため、投入した電力の何倍かの熱を取り出せるのが特長です。電気を熱源にできるため、太陽光発電の自家消費とも組み合わせやすく、建物の脱炭素という観点でも意味を持ちます。
一方で万能ではありません。高温の湯や瞬間的な大量供給が必要な厨房などでは、既存の燃焼式熱源やハイブリッド構成のほうが適することもあります。また、貯湯槽を置くスペースと、外気を取り込む屋外機の設置場所が必要です。「どの用途のお湯を、どの熱源でまかなうか」を分けて考えることが、失敗しない設計の勘所です。
捨てている熱を拾う
もう一段踏み込むなら、排熱回収です。厨房の排水、浴室の排湯、空調機や冷凍機が屋外へ捨てている排熱には、まだ利用できる温度が残っていることがあります。これを給水の予熱に使えば、熱源の負担はその分だけ軽くなります。導入には配管の取り回しや衛生面の配慮が要るため、新築や大規模改修のタイミングが検討しやすい機会です。
目安を持って判断する
給湯は建物の用途によって消費量の差が非常に大きい設備です。だからこそ、自館の使用実態を把握したうえで、同じ用途のZEB事例がどの程度の省エネ性能に到達しているかを目安として持っておくと、投資判断がぶれません。ZEBナレッジの「ZEB技術の分析」では、全国のZEB事例を用途別・延床面積別に確認でき、用途別の省エネ性能指標(BEI/基準値に対する一次エネルギー消費の比)を設計の目安として参照できます。
空調と照明を見直したあと、次の一手に迷っているなら、お湯の使い方を疑ってみる価値があります。設備更新や改修をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
想定読者:建物オーナー・施設管理ご担当者(とくにホテル・病院・福祉施設など給湯負荷の大きい用途)、自治体の脱炭素ご担当者、設計者
注:本コラムは一般に公開されている公的情報に基づく概説です。効果は建物の用途・規模・給湯負荷・設備構成や運用条件によって大きく異なりますので、導入判断は個別のご確認をお願いします。
出典・参考リンク
- 環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/