夏休みに入り、キャンパスから学生の姿が減るこの時期。それでも大学の電気メーターは、思ったほど下がりません。講義棟の照明や空調は止められても、研究棟の実験室や恒温室、サーバー室は24時間・365日動き続けているからです。用途の違う建物が同じ敷地に混在し、しかも一部は決して止められない――大学・研究施設のエネルギーは、この構造をふまえて考える必要があります。

まず「どの棟が、何に使っているか」

キャンパスは講義棟、研究棟、図書館、体育館、食堂、寄宿舎と用途がさまざまで、省エネ計算上も棟ごと・室用途ごとに評価が分かれます。エネルギーの使われ方も同じではありません。講義棟は授業期間の昼間に山ができ、研究棟は昼夜の差が小さい。図書館は照明と空調が主役で、研究棟は排気と熱源が主役です。

キャンパス全体の請求書を眺めているだけでは、この違いは見えません。棟ごと・系統ごとの計量(BEMS=ビルエネルギー管理システムによる見える化)が、大規模施設ほど効いてくる理由がここにあります。どの棟から手を付けるべきかが、数字で決まるようになります。

実験室の省エネは「排気」から

研究棟が電力を多く使う最大の要因は、換気量です。薬品を扱うドラフトチャンバー(局所排気装置)や実験室の全外気空調は、室内の空気を捨てて外気を入れ替える運転が基本のため、夏は外の熱をそのまま冷やし続けることになります。

ここで有効なのが、必要なときに必要なだけ排気する考え方です。ドラフトの扉(サッシ)の開度に応じて風量を絞る可変風量制御、在室状況に応じた換気量の調整、そして排気の熱を給気に移す全熱・顕熱交換。安全性の確保が絶対条件である以上、換気量そのものを一律に減らすことはできませんが、「使っていない時間の過剰な運転を減らす」余地は多くの施設に残っています。

大規模施設には「ZEB Oriented」という選択肢

延床面積10,000㎡以上の大規模建築物には、ZEBの区分のひとつとして「ZEB Oriented」という選択肢があります。学校等・事務所等の用途では、基準となる一次エネルギー消費量から40%以上の削減に加え、未評価技術(省エネ計算では効果が反映されないが省エネに資する技術)を導入することが要件です。ZEB Orientedは創エネ(太陽光発電など)を必須要件としていないため、屋根面積が限られ太陽光を十分に確保できない大規模な研究棟であっても、省エネの取り組みだけで到達を狙えます。将来的なZEB Readyへのステップアップを見据えた、現実的な第一段階の目標として活用できます。

一方で、延床面積が10,000㎡に満たない棟であれば、まずは1棟からZEB Ready(50%以上の省エネ)を実現し、キャンパス全体では段階的に、という進め方も十分に成り立ちます。全国のZEB認証事例のうち大学・研究施設がどの程度の性能値を出しているかは、当社の「ZEBナレッジ」で用途別に確認できます。

改修のタイミングを逃さない

大学の建物の多くは、1970〜80年代に建てられたものが更新期を迎えています。空調更新や大規模改修が予定されているなら、そこに断熱強化・高効率熱源・制御の見直しを織り込むのが最も費用対効果の高い進め方です。カーボンニュートラル宣言を掲げる大学が増えるなか、施設整備の計画そのものを脱炭素の中期計画と結びつけておくことが、結果的に予算の裏付けを得やすくします。

止められない研究活動を守りながら、止めてよいものを止める。その仕分けから始めてみてください。


想定読者:大学・高等専門学校の施設部門担当者、研究機関の管理部門、キャンパス整備に関わる設計者

参照元:環境省 ZEB PORTAL「ZEBの定義」(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html)。ZEB Orientedの要件(対象用途・削減率・未評価技術)は制度の定めによるため、具体の計画にあたっては最新の公募要領・所管行政庁等にご確認ください。実験施設の換気量は法令・安全基準の遵守が前提です。