補助金の要件、入札の加点、自治体への届出。建物の環境性能を示す仕組みは一つではなく、場面ごとに違うものが出てきます。「うちはCASBEEのAランクだが、それはZEBなのか」というご質問をいただくのも無理はありません。それぞれが何を測っているのかを整理します。
測っているものが、そもそも違う
**BELS(ベルス)**は、建物の省エネ性能を第三者評価機関が評価して表示する制度です。指標はBEI(設計上の一次エネルギー消費量を国の基準値で割った値。小さいほど省エネ)で、見ているのは基本的にエネルギーの量だけです。クルマでいえば燃費表示にあたります。
ZEBは、制度の名前ではなく建物の状態を指す言葉です。年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロに近づけた建物を指し、省エネと創エネの度合いに応じて『ZEB』『Nearly ZEB』『ZEB Ready』『ZEB Oriented』の区分があります。その達成を第三者が確認して表示する場が、先のBELSです。両者は並ぶものではなく、「評価される中身」と「評価して示す仕組み」の関係にあります。
**CASBEE(キャスビー/建築環境総合性能評価システム)**は、対象がもっと広い制度です。建物の環境品質(Q=室内の快適性、耐用性、まちなみや生態系への配慮など)を環境負荷(L=エネルギー、資源、周辺環境への影響など)で割った「BEE」という比で評価し、S・A・B+・B−・Cの五段階でランクを付けます。省エネはその一要素にすぎません。CASBEEで高評価だからZEBである、とは言えないのはこのためです。
使う場面から逆算する
違いを覚えるより、実務では「どの場面で何が求められるか」を押さえるほうが役に立ちます。
BELS(とそこに表示されるZEB区分)が出てくるのは、ZEB関連の補助事業の要件、2024年に始まった省エネ性能表示制度のラベル、テナント募集での訴求など、性能を数値で示す場面です。
一方CASBEEは、行政手続きの側で登場します。一部の自治体は独自に「自治体版CASBEE」を定め、一定規模以上の建築物について評価結果の届出を義務づけています。高い評価にあわせて容積率の緩和などのインセンティブを用意する例もあります。対象規模も運用も自治体ごとに異なりますので、計画地の所管部署にご確認ください。
どちらかを選ぶものではない
CASBEEのエネルギーに関する評価も、建築物省エネ法の一次エネルギー消費量計算の結果を土台にします。省エネ計算という作業は共通で、そこから先の枠組みが分かれていくと考えるとわかりやすいでしょう。
ただし取得にはそれぞれ費用と時間がかかります。全部を狙うのではなく、「制度上義務のもの」「補助金で要るもの」「対外的に示したいもの」を分け、必要なものから決めるのが現実的です。どの物差しでも土台はエネルギーの計算ですから、設計の早い段階でその精度を上げておくことが、結局はいちばん効いてきます。
想定読者:建物オーナー、自治体の施設・脱炭素ご担当者、設計者
参照:CASBEEの評価体系(環境品質Q/環境負荷L、BEEによるS〜Cの五段階、自治体版CASBEEの届出制度)は一般社団法人日本サステナブル建築協会(JSBC)および一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)の公開情報による。BELS・ZEB区分・省エネ性能表示制度は建築物省エネ法に基づく制度の一般的整理による。自治体版CASBEEの対象規模・インセンティブの内容は自治体ごとに異なり、本コラムでは個別自治体名・件数は記載していない。適用にあたっては最新の公的情報および所管部署でご確認ください。