まだ日中は暑いものの、朝晩に涼しさを感じる日が出てきました。これから10月にかけての時期は、空調の世界では「中間期」と呼ばれます。外が暑くも寒くもないのだから、エネルギーはあまり使わないはず ― ところが実際には、中間期の電気使用量が思ったほど下がらない建物が少なくありません。その原因のひとつが、建物の中で冷房と暖房が同時に働いてしまう「冷暖同時運転」です。

なぜ同じ建物で冷房と暖房が競合するのか

事務所ビルや庁舎の平面を、窓ぎわの帯(ペリメータゾーン)と、その内側の奥まった部分(インテリアゾーン)に分けて考えてみます。

窓ぎわは外気温や日射の影響を直接受けます。中間期の朝は冷え込み、暖房が欲しくなる。一方、建物の奥は外の影響が小さく、人・照明・パソコンやサーバーといった機器から出る熱(内部発熱)が溜まり続けるため、真冬でも冷房が必要になることがあります。つまり同じフロアの中に、暖房を求める場所と冷房を求める場所が同時に存在する。これが中間期の空調が難しい理由です。

起きやすい三つのムダ

① 冷やしてから温め直す(リヒート)
過冷却や除湿のために、いったん冷やした空気を再加熱する方式が残っている建物では、冷熱と温熱を両方つくることになります。エネルギーの観点では二重の消費です。

② 冷やしすぎを各室の暖房で打ち消す
共通の空調機が送る風の温度が低すぎると、負荷の小さい部屋は冷えすぎます。すると個別空調やヒーターで暖め返す。フロア全体では冷房と暖房が打ち消し合っている状態です。

③ 熱源を止められない
本来なら冷凍機やボイラーを停止できる日でも、一部の系統が要求を出し続けるために熱源が動き続け、低負荷で効率の悪い運転が続きます。

現場で確かめられること

大がかりな調査をしなくても、次のような点は運転記録から確認できます。

  • 外気温が下がったのに、電気やガスの使用量が夏と大きく変わらない
  • 冷水と温水(あるいは冷房と暖房のモード)が、同じ時間帯に立ち上がっている
  • 空調機の給気温度の設定が、年間を通じて固定されたままになっている
  • 窓ぎわの席から「寒い」、奥の席から「暑い」という声が同じ日に出る

BEMSや中央監視装置があれば、冷温同時の状況はトレンドグラフではっきり見えます。装置がない建物でも、月別の使用量を並べるだけで違和感に気づけることがあります。

打ち手は「制御」と「外皮」の二段構え

短期的には、設定温度や給気温度の季節切替、冷暖切替の運用ルールの明確化、外気を冷房代わりに使う運転(外気冷房)の活用、熱源を停止してよい条件の整理といった、運転側の見直しが効きます。工事を伴わない調整で改善する例も多く、着手しやすい領域です。

中長期的には、窓ぎわの負荷そのものを小さくすることが本質的な対策になります。断熱性能の高いガラスや内窓、日射遮蔽の追加でペリメータの負荷変動が穏やかになれば、冷暖の競合そのものが起きにくくなります。ZEB化で外皮性能を高める効果は、暖冷房エネルギーの削減だけでなく「制御しやすい建物になる」という形でも表れます。

中間期は、空調が本当に必要な分だけ動いているかを確かめる好機です。秋の運転が始まる前に、一度データを眺めてみてはいかがでしょうか。


想定読者:建物オーナー、自治体の施設管理・営繕担当者、ビル管理・設備保全の担当者、設計実務者

参照・注記:本コラムは特定の統計値・実測値を引用していません。記載の内容は空調設備計画・運用における一般的な考え方を整理したもので、ペリメータ/インテリアの区分や冷暖同時運転の発生状況は、建物の規模・用途・空調方式(中央方式か個別方式か)・ゾーニングによって大きく異なります。実際の運転見直しは、現況の系統構成と運転データの確認に基づいてご検討ください。