事務所を福祉施設に、店舗を保育所に、統廃合した学校を地域の複合施設に。建物を建て替えずに使い方だけを変える「用途変更(コンバージョン)」のご相談が増えています。人口や事業の変化に建物を合わせる、現実的な選択肢です。

この用途変更には、省エネの観点から見落とされやすい特徴があります。制度上の義務はほとんど生じない一方で、建物の中で起きることは大きく変わる、という点です。

省エネ基準の適合義務は、原則かからない

2025年4月1日以降に工事に着手する建築物は、原則すべて省エネ基準への適合が義務付けられました。ただし義務がかかる行為は「新築」と「増改築」であって、用途変更や修繕・模様替えはその対象行為に含まれません。用途変更だけであれば、省エネ適合性判定を受ける必要は基本的にないということです。

一方、建築基準法では、変更後の用途が特殊建築物(不特定多数が利用する用途など)にあたり、その部分の床面積が200㎡を超える場合に確認申請が必要になります(法第87条。2019年の改正で「100㎡超」から「200㎡超」に緩和されました)。政令で定める類似の用途どうしの変更なら、手続きが不要な場合もあります。

手続きは防火・避難を中心に進むため、省エネはその外側に置かれやすく、誰も指摘しないまま計画が固まりがちです。

設備は、前の用途のままでいいのか

一方で、建物の使われ方は大きく変わります。省エネ計算では、室の用途ごとに運転時間・在室人数・必要換気量・照度といった想定条件が定められています。事務所と福祉施設とでは、稼働する時間帯も、必要な外気量も、給湯の量も違います。

結果として、次のようなズレが起きます。

  • 夜間や休日も使うのに、空調がフロア単位でしか動かせない
  • 執務用の明るさで設計された照明が、居室には過剰になる
  • 給湯需要が増え、既存の給湯設備では容量が足りない
  • 換気量の前提が変わり、不足する、あるいは過剰に外気を入れ続ける

いずれも光熱費と快適性の両方に効いてきます。用途変更後に「前より電気代が上がった」というご相談の多くは、ここに原因があります。

内装をはがす機会は、そう何度も来ない

用途変更は内装解体をともなうことが多く、天井裏や壁の中に手が届きます。断熱の追加、配管・ダクトの更新、照明と制御の一新、空調ゾーニングの切り直し。営業しながらでは手を出しにくい工事が、同じ足場・同じ養生の中で進められます。後から別工事で行えば、同じ内容でも解体と復旧の費用が二重にかかります。

なお、すでにBELSやZEBの評価を取得している建物は注意が必要です。基準となる一次エネルギー消費量は用途ごとに定められているため、用途が変われば従前の評価がそのまま通用するとは限りません。表示を続けるつもりなら、計画の初期段階で確認しておくことです。

用途変更を検討し始めた段階で、設備と外皮の見直しを同じ図面の上に乗せておく。それだけで、その後10年の光熱費はかなり変わります。


想定読者:建物オーナー、自治体の施設担当者、設計者・管理会社

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