省エネの話題は、どうしても空調・照明・熱源に集まります。実際その三つで建物のエネルギーの大半を占めるので、順番としては正しいのですが、そこばかり見ていると見落とされる設備があります。給水ポンプです。水は自然には上に登らないので、蛇口から水が出るということは、その裏で必ず誰かが電気を使って水を持ち上げている、ということでもあります。
省エネ計算に出てこないから、意識されにくい
建築物省エネ法の一次エネルギー消費量計算(WEBPRO)で評価するのは、空調・換気・照明・給湯・昇降機の五用途です。給水ポンプはここに含まれません。BELSやZEBの評価上は「その他」の扱いになり、計算書を眺めているだけでは存在に気づけない設備です。
しかし電気の請求書は、計算対象かどうかで区別してくれません。ポンプが回れば、そのぶん確実に電気代として出ていきます。省エネ計算の数字が良くても実際の電気使用量が思ったほど下がらない建物では、こうした「計算外の負荷」が効いていることがあります。以前のコラムで触れたコンセント負荷と同じ構図です。
給水方式によって、電気の使い方が変わる
中小規模のビルや公共施設でよく見かけるのは、次の方式です。
高置水槽方式は、受水槽から屋上のタンクへ揚水ポンプで水を上げ、あとは重力で各階に配る方式です。ポンプは満水になれば止まるので運転時間は短めですが、常に最上部まで上げきる必要があります。
加圧給水(ポンプ直送)方式は、受水槽から直接ポンプで圧をかけて配る方式です。屋上に水槽が要らず、水が滞留しにくい利点があります。一方で使用状況に合わせてポンプが動き続けるため、制御の良し悪しがそのまま消費電力に出ます。
古い加圧給水ユニットは、圧力スイッチで発停を繰り返す定速運転のものがあります。これをインバータ制御の機種に更新すると、必要な水量に応じて回転数を落とせるようになります。ファンやポンプの動力は回転数のおおむね三乗に比例するため、回転数を少し落とすだけで動力は大きく下がります。更新時期を迎えたポンプがあるなら、同型交換で済ませる前に一度検討する価値があります。
節水は、水道代だけの話ではない
節水コマや自動水栓、洗浄水量の少ない便器への更新は、水道料金の削減策として語られがちです。しかし使う水が減れば、その水を汲み上げるポンプの運転も減ります。給湯を使う場所であれば、温める分のエネルギーも同時に減ります。水道代・電気代・ガス代が同時に少しずつ下がる、という形になります。
大きな投資ではないぶん効果額も派手ではありませんが、トイレ改修や内装更新のタイミングであれば追加費用はわずかです。「ついでにできること」として計画に入れておくのが現実的です。
まず確認したい三点
- ポンプの製造年と制御方式(定速かインバータか)を、機器銘板で確認する
- 受水槽の容量と実際の使用水量が見合っているか。利用人数が減っているのに大きな水槽を維持していないか
- 水道の検針票を月別に並べ、不自然に多い月がないか。漏水は水道代とポンプ電力の両方を静かに増やします
地味な設備ですが、24時間365日、建物が使われている限り動き続けています。空調や照明の見直しがひと通り済んだ建物では、次に手を付ける先の候補になります。
想定読者:建物オーナー、自治体の施設管理担当者、設計・設備担当者
参照:建築物省エネ法の一次エネルギー消費量計算(WEBPRO)の評価対象用途に関する一般的整理。個別建物の給水方式・ポンプ仕様は現地の機器銘板および設備図書によります。具体的な削減量は建物ごとに異なるため、本コラムでは数値の試算は行っていません。