本コラムではこれまで、窓の日射遮蔽や屋根のクールルーフなど、外皮(がいひ/壁・屋根・床・窓など、外気と接する建物の外周部分)の工夫を取り上げてきました。今回はその土台にある「断熱・気密」と、見落とされがちな「熱橋(ねっきょう)」を整理します。派手さはありませんが、ZEB(ゼブ/ネット・ゼロ・エネルギー・ビル:省エネと創エネを組み合わせ、使うエネルギーを実質ゼロに近づけた建物)づくりで最初に効いてくる、建物の基礎体力にあたる部分です。
器を整えてから、設備を選ぶ
環境省が示すZEBの考え方は、「まず需要を減らす(パッシブ)→ 残りを効率よく使う(アクティブ)→ 足りない分を創る(創エネ)」という順番です。断熱・気密は、この最初の段階の中心にあります。
外皮で熱の出入りを小さくするほど、冷暖房に必要な能力が下がり、空調設備も小型で済みます。設備費も運転コストも下がる。断熱の弱い器のまま高効率な設備だけを入れても、漏れ続ける熱を追いかけることになります。器を整えてから設備を選ぶ――これが最も費用対効果の高い進め方です。
断熱と気密はセットで働く
断熱は壁・屋根・床に断熱材を入れて熱を伝わりにくくすること、気密はすき間からの空気の出入りを抑えることです。厚い断熱材を入れても、すき間から外気が漏れ入れば、冷暖房した空気はそのまま捨てられてしまいます。
気密が確保できると換気も設計どおりに働き、全熱交換器のような熱回収の仕組みが効果を発揮します。断熱・気密・換気は三点セットで考えるのが基本です。
見落とされがちな「熱橋」
熱橋(ヒートブリッジ)とは、断熱材が途切れるなどして、そこだけ熱が集中して出入りする部分です。鉄骨やコンクリートの梁・柱、バルコニーの床、サッシまわりが代表例です。
面積は小さくても、その一点から熱が抜けるため、断熱性能を思ったほど発揮できない原因になります。冬は結露が生じ、仕上げ材の劣化やカビにつながることもあります。断熱材を厚くするより、「断熱層が途切れていないか」を設計段階で確かめるほうが、費用をかけずに効く場合も多いのです。
外皮の性能は数字で確かめられる
外皮の性能は指標で確認できます。BPI(外皮性能指標)は壁・屋根・窓などの熱性能を表す数値で、小さいほど断熱や日射遮蔽がよく効いていることを意味します。
自社の計画がどの水準か迷ったときは、ZEBナレッジの「ZEB技術の分析」が参考になります。ZEBを実現した建物のBPIを用途や延床面積ごとに確認でき、条件の近い建物が実際にその性能を達成しているという事実は、設計の目安にも説明材料にもなります。
断熱・気密は、竣工後に手を入れるのが最も難しい部分です。だからこそ計画の早い段階で押さえる価値があります。既存建物でも、屋根や外壁の更新に合わせて断熱を追加すれば工事は一度で済みます。外皮の見直しをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
想定読者:建物オーナー、自治体の施設・脱炭素ご担当者、設計者
注:本コラムは一般に公開されている公的情報に基づく概説です。適切な断熱仕様や熱橋対策は、建物の構造・用途・地域区分によって異なります。
出典・参考リンク
- 環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/
- 環境省「ZEBの定義・実現方法」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html