空調の省エネというと、エアコンや熱源機(冷凍機・ボイラーなど熱をつくる機器)の効率に目が行きがちです。しかし、つくった冷気や温水を建物の隅々へ「運ぶ」ファン(送風機)とポンプも、営業時間中ずっと回り続けるため、電力を静かに積み上げています。今回は、この搬送エネルギーを賢く減らす「インバータ制御」のはなしです。
アクセル全開でブレーキを踏んでいませんか
従来の設備では、ファンやポンプは一年で最も負荷が大きい真夏のピークに合わせた能力を選び、常に一定の回転数で運転するのが一般的でした。風量や水量を抑えたいときは、ダンパーやバルブ(風や水の通り道を絞る弁)で流れをせき止めます。これは、アクセルを全開にしたままブレーキで速度を調整するような運転で、絞った分のエネルギーはそのまま無駄になってしまいます。
回転数を下げると、電力は「3乗」で効く
そこで役立つのがインバータ(モーターの回転数を電気的に変える装置)です。送風機やポンプには、風量・水量が回転数にほぼ比例する一方、必要な動力は回転数のおよそ3乗に比例して小さくなるという性質があります。計算上は、風量を8割に抑えれば動力は約半分。実際の削減幅はダクトや配管の抵抗、制御方法によって変わりますが、建物の空調は一年の大半がピークを下回る「部分負荷」での運転ですから、回転数を落とせる時間が長いほど効果は着実に積み上がります。
VAV・VWVで「必要な分だけ」を自動に
回転数の調整を自動で行う代表的な仕組みが、VAV(変風量方式:室温に応じて各エリアへ送る風量を変える)と、VWV(変流量方式:空調の負荷に応じて冷温水の流量を変える)です。CO2濃度に応じて外気の取入れ量を調整する制御とも相性がよく、「必要なところへ、必要なときに、必要なだけ」を設備が自動で実現してくれます。なお、ビル用マルチエアコンなどの個別方式は既にインバータ内蔵が主流のため、この工夫が特に効くのは、中央熱源方式の建物や、長時間回り続ける換気ファン・循環ポンプです。既設のファン・ポンプへのインバータ追加は、比較的取り組みやすい省エネ改修の定番メニューでもあります。
目安づくりにZEBナレッジを
どこまで狙えるかの目安には、ZEBナレッジの「ZEB技術の分析」が役立ちます。全国のZEB事例について、空調の省エネ性能(BEI/AC:空調の一次エネルギー消費を基準値との比で表す指標)などの実例値を用途別に確認でき、設備更新の目標設定の参考になります。熱源の高効率化とあわせて、「運ぶ」エネルギーも一度点検してみてください。設備更新や改修をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
想定読者:建物オーナー・施設管理ご担当者、自治体の脱炭素ご担当者、設計者
注:本コラムは一般に公開されている公的情報に基づく概説です。削減効果は建物の用途・規模・設備構成や運用条件によって異なりますので、個別にご確認ください。
出典・参考リンク
- 環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/