社用車の電動化や、テナント・来館者からの要望を受けて「駐車場にEV充電器を置きたい」というご相談が増えています。充電器そのものは以前より選びやすくなりましたが、設置できるかどうか、いくらかかるかを決めているのは、多くの場合、充電器ではなく建物側の電気設備のほうです。見積もりを取る前に確認しておきたい点を整理します。
まず「普通充電か、急速充電か」
充電器は大きく普通充電と急速充電に分かれ、必要な電力が桁違いに違います。普通充電は数kW程度で、数時間から一晩かけて充電する方式。急速充電は数十kW規模を短時間で使います。
分かれ目になるのは、車がその場所に何時間停まっているかです。社用車が夜間に車庫に戻る、職員が日中ずっと駐車している――こうした使い方であれば、普通充電を複数台置くほうが、建物への負担も工事費も軽く済みます。急速充電が要るのは、来訪者が短時間で充電して去っていく場面です。「とりあえず急速を」と決める前に、実際の駐車時間を確かめておくと判断がぶれません。
効いてくるのは電気料金の「基本料金」
高圧で受電している建物では、電気料金の基本料金が最大需要電力(デマンド。一定時間ごとの平均需要電力の最大値)で決まります。しかもこの値は、一度更新されるとその後一定期間の基本料金に反映される仕組みです。
つまり、夏の昼下がりに冷房がピークを打っているところへ充電が重なると、その一瞬のために基本料金が上がり続ける、ということが起こり得ます。
打てる手はいくつかあります。夜間や冷房ピークの時間帯を避けて充電する運用ルールをつくる、建物全体の需要に応じて充電出力を自動で絞る制御(負荷平準化)を組み込む、複数台ある場合は同時ではなく順番に充電する――いずれも、機器の選定段階で決めておくべき事項です。デマンド監視装置がすでに入っている建物なら、それと連動させる構成も検討できます。
受変電設備と幹線に余裕があるか
次に見るのが、受変電設備(キュービクル)の容量、分電盤の空き回路、そして駐車場までの幹線ルートです。既存建物では、充電器本体より配管配線や盤の改修のほうが費用が大きくなることも珍しくありません。
将来的に2台、5台と増やす見込みがあるなら、最初の工事のときに幹線の容量と盤のスペースを確保しておくと、後の増設がずっと楽になります。判断に必要なのは、単線結線図などの電気設備図面と、直近1年分のデマンド記録です。この2つが揃っていれば、電気設備の設計者が現実的な台数を早い段階で示せます。
太陽光や蓄電池と組み合わせる
自家消費型の太陽光発電がある建物では、発電が伸びる時間帯に充電を寄せることで、買電を増やさずに充電をまかなえる可能性があります。蓄電池や、車両から建物へ電気を戻すV2Bといった仕組みもありますが、対応機器や系統連系の要件を個別に確認する必要があります。
なお、EV充電に使う電力は、ZEBの評価に用いるBEIの対象用途(空調・換気・照明・給湯・昇降機)には含まれません。省エネ計算上の数値は動きませんが、実際の電気料金と契約電力には確実に効いてきます。計算の外にあるからこそ、運用コストとして別枠で見ておきたい部分です。
充電器の設置は、駐車場の工事というより電気設備の計画そのものです。「何台を、どの時間帯に、どの出力で」を先に決めておけば、見積もりの精度も、社内での判断も一段と早くなります。
注:充電設備の設置可否・工事範囲は、建物ごとの受変電設備の状況や電力会社との契約内容によって異なります。具体的な検討にあたっては電気設備の設計者および電力会社へのご確認をお願いします。補助制度は年度ごとに内容・要件が変わるため、最新の公募要領をご確認ください。