「省エネに十分配慮すること」。設計業務の仕様書で、いまも見かける一文です。しかしこの書き方では、どこまでの性能が仕上がるかは受注した設計者の裁量に委ねられてしまいます。建物の省エネ性能は、図面を描き始めるより前、発注のしかたを決めた時点でおおむね決まっています。発注者側がZEBを求めるときに仕様書へ書き込んでおきたいポイントを整理します。
目標は「言葉」ではなく「数値とランク」で
省エネ性能を測る共通のものさしは BEI(Building Energy Index)です。国が定める基準一次エネルギー消費量を1.0としたときに、その建物が何割で済むかを表す数値で、小さいほど省エネです。ZEBのランクもこの指標で定義されており、再生可能エネルギーを除いた省エネだけでBEI 0.5以下なら「ZEB Ready」、0.25以下なら「Nearly ZEB」、再エネを含めて年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロになるものが「ZEB」です。
仕様書には「ZEB Ready相当(再エネを除くBEI 0.5以下)を満たすこと」のように、ランク名と数値の両方を書くのが安全です。ランク名だけだと解釈の幅が残り、数値だけだと第三者評価を受けるのかどうかが曖昧になります。
外皮と設備は分けて書く
BEIは設備の効率でも稼げてしまうため、これだけを条件にすると、断熱や日射遮蔽が手薄なまま高効率機器で帳尻を合わせた建物になりかねません。外皮の性能は BPI(外皮性能指標。こちらも1.0が基準で、小さいほど断熱・日射遮蔽が良い)で別途条件を立てておくと、建物本体の素性が確保されます。外皮は後から直しにくく、設備は15〜20年で更新されます。長く効くのは前者です。
「いつ確かめるか」を工程に書き込む
性能条件を書いても、確認のタイミングが決まっていないと、実施設計の終盤で「間に合わないので設備で調整」という展開になりがちです。基本設計完了時に一次エネルギー消費量の試算を提出させる、実施設計完了時にBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の評価書取得を業務範囲に含める、といった形でマイルストーンを工程に埋め込んでおくと、後戻りが減ります。
価格だけで選ばない仕組みを
ZEB水準の設計は検討量が増えます。価格競争だけで設計者を選ぶと、その手間が見積もりから削られます。プロポーザル方式や総合評価方式でZEBの実績・提案内容を加点対象にする、光熱費まで含めたライフサイクルコストで比較する。この一手間が竣工後20年、30年の運用費に効いてきます。
発注仕様書は、建物の省エネ性能について発注者が意思表示できる、最初で最大の機会です。記載方法に迷われる際は、他自治体の事例なども含めてご相談ください。
想定読者:自治体の施設担当者、建物オーナーの営繕・総務部門、設計事務所の実務者
参照元:ZEBの区分・BEI/BPIの定義は「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律(建築物省エネ法)」および環境省・経済産業省のZEB定義(ZEBロードマップ)に基づく一般的な内容。個別の発注制度・加点配点は自治体ごとに異なるため、本稿では具体の数値には触れていない。ZEBナレッジ(https://www.zeb.co.jp/knowledge/)の各ツールは、目標設定時の類似事例確認に活用できる。