猛暑のさなかに空調が止まり、急ぎで更新することになった。そんな話をこの時期によく伺います。慌てて決めた更新は、たいてい「今ついているものと同じような機器への取り替え」に落ち着きます。悪い選択ではありませんが、せっかくの機会に建物の性能を上げる余地は残ったままです。次年度の予算や修繕計画を考え始めるこの季節に、設備更新の順番について整理してみます。
緊急の更新では、選択肢が狭まる
機器が止まってからの更新には、いくつもの制約がつきます。まず納期です。施設を長く止められない以上、選べるのは在庫が確保できる機種に限られます。次に検討の時間です。高効率機に替えるべきか、能力を見直すべきか、制御を足すべきか――比較する余裕はありません。そして補助金です。多くの制度は公募の時期が決まっており、着工前の申請が条件になるものが少なくありません。壊れてから探し始めても、間に合わないことがほとんどです。
緊急更新では、「省エネにするかどうか」を考える前に選択肢のほうが先に消えていきます。逆にいえば、時間があるうちに決めておけば、同じ費用でも中身を選べるということです。
設備は、寿命の来る時期がそろわない
建物の設備は、種類ごとに更新の時期がばらばらにやってきます。空調機、照明器具、受変電設備、給湯機器、自動制御――それぞれ傷み方も更新の周期も違います。会計上の耐用年数(減価償却の区分)は税務の目安であって、実際に使える年数とは別のものです。判断の材料になるのは、設置からの経過年数に加えて、故障の頻度、部品供給の状況、冷媒など制度面の動きです。
ここで手元にほしいのが、現況の機器リストです。設置年、型番、能力、直近の不具合。これを一枚にまとめるだけで、「あと数年で複数の設備が重なる」といった見通しが立ちます。光熱費の推移と並べれば、どこから手をつけると効くかも見えてきます。
まとめられるものは、まとめる
更新の時期がばらつくと、同じ天井を何度も開けることになりがちです。空調機を替えた翌年に照明を替え、その次に配線を触る。そのたびに仮設や養生の費用が重なり、施設の利用も止まります。
一方で、まとめると効くものもあります。空調機の更新に合わせて外皮の断熱や日射遮蔽を見直せば、必要な能力そのものを小さくできます。ただし、すべてを一度にやれば費用が集中します。現実的には「何を同時にやり、何を分けるか」を先に決めておくこと――この順番こそが、更新計画の中身です。
決めるのは、予算を組む前
長期修繕計画をお持ちであれば、そこに省エネ・ZEB化の視点を一項目足すところから始められます。計画がなくても、機器リストと光熱費のデータがあれば議論は始められます。改修が経済的に見合うかどうかの当たりは、当社が公開しているZEBナレッジの「既存建築物ZEB化改修経済性分析ツール」でも簡易に確かめられます(結果はあくまで参考情報で、実際の判断には個別の検討が必要です)。
設備の更新は、いつか必ず来る支出です。同じお金を使うのであれば、光熱費が下がり、快適性も上がる形にしておきたいところです。そのための分かれ目は、機器が止まる前に順番を描けているかどうかにあります。更新の時期が近い設備をお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。
想定読者:建物オーナー、施設・設備管理のご担当者、自治体の施設営繕・脱炭素ご担当者、設計者
参照元:設備改修・保全の一般的な実務に基づく解説。ZEBナレッジ「既存建築物ZEB化改修経済性分析ツール」については https://www.zeb.co.jp/knowledge/ の公開情報による。個別の耐用年数・補助金要件などの具体的数値は、制度・機種により異なるため本稿では明示していません。