これまで本コラムでは、窓や断熱で熱の出入りを抑える「パッシブ技術」と、太陽光発電などでエネルギーを生み出す「創エネ」を取り上げてきました。残るもう一つの柱が、設備でエネルギーを無駄なく使う「アクティブ技術」です。ZEB(ゼブ/ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は、この三つがそろって初めて成り立ちます。今回は、目立たないけれども効果の大きいアクティブ技術の勘所を整理します。

「減らす」には順番がある

環境省は、ZEBを実現する手順として三つの段階を示しています。第一にパッシブ技術で需要そのものを減らすこと、第二にそれでも必要な分をアクティブ技術で効率的に使うこと、第三に残りを創エネで賄うこと、という順番です。

ここで大切なのが順番です。先に外皮(建物の壁・屋根・窓など外周部分)で熱の出入りを小さくしておくほど、必要な空調設備も小さくて済み、アクティブ技術の効果は一段と高まります。器を整えてから設備を選ぶ――これが投資効率を高める王道です。

空調・照明・換気・給湯を高効率に

業務用の建物では、空調・照明・換気・給湯といった設備が消費エネルギーの大きな部分を占めます。だからこそ、ここを高効率化する効果は大きいのです。

空調では、高効率なヒートポンプ機器を選ぶことに加え、建物の負荷に合った容量を選ぶことが大切です。過大な設備は初期費用も運転コストもかさみます。照明はLEDが基本ですが、窓際は昼間の自然光を活かして自動的に明るさを調整し、人がいないエリアは人感センサーで消灯するなど、「必要なときに必要なだけ」点ける制御を組み合わせると、無駄がさらに減ります。

換気では、全熱交換器(排気が持つ熱や湿気を回収し、取り入れる外気に移して空調の負荷を減らす装置)が有効です。室内のCO2濃度に応じて換気量を調整すれば、過剰な換気で冷暖房した空気を捨ててしまう無駄も抑えられます。給湯も、高効率な機器への更新が効きます。

「見える化」で効果を持続させる

設備は入れて終わりではありません。BEMS(ビル・エネルギー管理システム=建物のエネルギー使用状況を計測・記録し、最適に制御する仕組み)で消費を「見える化」すると、無駄な運転や行き過ぎた設定に気づき、運用しながら改善していけます。

目標値づくりには、ZEBナレッジの「ZEB技術の分析」も役立ちます。用途別の省エネ性能(空調のBEI/AC、照明のBEI/Lなど)の実例値を確認でき、自分の建物で何をどこまで高効率化すればよいかの目安がつかめます。

設備の更新や改修は、建物の性能を一段引き上げる絶好の機会です。空調や照明の入れ替えを検討するタイミングで、ぜひ「賢く使う」視点も計画に加えてみてください。


想定読者:建物オーナー、自治体の脱炭素ご担当者、設計者

注:本コラムは一般に公開されている公的情報に基づく概説です。設備の効果や費用は建物の用途・規模・条件によって異なるため、個別にご確認ください。

出典・参考リンク

  • 環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/
  • 環境省「ZEBの定義・実現方法」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html