ZEB(ゼブ/ネット・ゼロ・エネルギー・ビル:省エネと創エネを組み合わせ、使うエネルギーを実質ゼロに近づけた建物)を検討するとき、多くの方がまず気にされるのが「初期費用が高いのでは」という点です。高断熱の外皮や高効率設備、太陽光発電などを備えれば、建設時の費用は通常の建物より増えます。しかし建物のコストは、建てるときだけで終わりません。今回は、建物の生涯でかかる費用「ライフサイクルコスト(LCC)」という視点から、ZEBの経済性を整理します。
建物のコストは「氷山」に似ている
ライフサイクルコストとは、設計・建設の初期費用に、稼働後の光熱費・保全費・修繕費・運用費、さらに解体までを合わせた、生涯の総費用のことです。建物は数十年にわたって使われるため、毎年の光熱費や維持管理費が積み重なり、生涯で見ると初期費用より大きくなることも少なくありません。水面上に見える氷山の一角が初期費用、水面下の大きな塊が運用のコスト――そんなイメージです。初期費用の大小だけで判断すると、この「隠れたコスト」を見落としかねません。
ZEBは「運用の費用」を先に減らす投資
ZEBは、使うエネルギーそのものを設計段階から小さく造り込むため、稼働後の光熱費を継続的に抑えられます。断熱や高効率設備への上乗せ投資は、いわば将来の光熱費を前払いで買い取るようなもので、毎年の削減額が積み上がるほど、初期の差額を取り戻していきます。近年はエネルギー価格の変動も大きく、そもそも消費量が少ない建物は、価格が上下しても影響を受けにくいという安心感もあります。
補助金や「金額に表れない価値」も合わせて
経済性は、光熱費だけでなく周辺の効果も合わせて見たいところです。国や自治体の補助金を使えば、実質的な初期費用の差はさらに縮まります。加えて、快適性の向上や資産価値、停電時の事業継続といった、金額に表れにくい価値もあります。既存建物の改修であれば、ZEBナレッジの「既存建築物ZEB化改修経済性分析ツール」で費用と効果の目安を試算できます(結果は検討の出発点となる参考値としてご活用ください)。
「何年で回収できるか」は自分の建物で
投資回収の年数は、建物の用途・規模・使い方・エネルギー価格によって大きく変わり、一律の正解はありません。だからこそ、初期費用と将来の光熱費を並べ、自分たちの建物に即して試算することが第一歩になります。目先の建設費だけでなく、十年・二十年先まで見渡す――その視点が、ZEBを「割高な建物」から「長く得をする建物」へと変えていきます。試算や進め方でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
想定読者:建物オーナー・施設管理ご担当者、自治体の公共施設・脱炭素ご担当者、設計者
注:本コラムは一般に公開されている情報に基づく概説です。投資回収年数や光熱費削減の程度は、建物の用途・規模・利用状況やエネルギー価格によって異なります。個別の検討にあたっては、専門家による試算をご確認ください。
出典・参考リンク
- 環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/
- 資源エネルギー庁「省エネルギー・新エネルギー」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/