十月の組織改編に向けて、この時期は執務室のレイアウト変更のご相談が増えます。机とパーティションを動かすだけの内装工事に見えますが、天井の中にある空調・照明・換気は、竣工時のレイアウトを前提に設計されています。そのズレが、冬の「暑い・寒い」や翌年の電気代として表に出てきます。

温度を測っている場所は動かない

空調が室温を判断しているのは、壁のリモコンや天井のセンサーが置かれた一点だけです。その近くに人の集まる島をつくれば、部屋全体はまだ暑くないのにセンサーだけが高温を検知し、冷やしすぎになります。逆にセンサーのまわりが空席になると、奥の席は暑いままです。「レイアウトを変えてから空調の効きがおかしい」というご相談の多くは、機器の不調ではなく、この位置関係の変化が原因です。

センサーやリモコンは移設できる場合もあります。まず、いま温度を測っている点と、人が座る場所の関係を図面で確かめておくと判断しやすくなります。

系統をまたぐ間仕切りに注意する

もう一つ多いのが、間仕切りの新設です。空調も照明も、ある広さのまとまり(系統・回路)を単位に制御されています。その境界を無視して壁を立てると、一つの部屋の中に性格の違う二つの系統が入り込み、片方が冷房、片方が暖房という状態になりかねません。とくに窓ぎわ(ペリメータ)と室内側(インテリア)は、日射や外気の影響の受け方がそもそも違います。この境目をまたぐ間仕切りは要注意です。

照明も同じで、スイッチ一つで点く範囲と新しい部屋の輪郭が合っていないと、使わない場所まで点けることになります。人感センサーも、間仕切りで検知範囲が遮られると本来の働きをしません。

換気と、持ち込まれる熱

会議室や小部屋を増やしたときは、そこに給気と排気が届いているかを確認します。天井の吹出口・吸込口の数と位置は、もとの間取りで決まっているためです。人数のわりに換気の足りない部屋は、空気のこもりとして体感に表れます。

あわせて見ておきたいのが、その部屋に持ち込まれる機器です。複合機やネットワーク機器を小部屋に集めると、その一室だけ発熱が集中し、空調の能力が追いつかないことがあります。

図面を一枚、重ねてみる

やること自体は難しくありません。新しいレイアウト図に、空調の吹出口とセンサー、照明の回路、給排気口を重ねてみる。それだけで無理のある箇所はたいてい見えてきます。内装工事の見積もりを取る前にこの一手間を入れておけば、あとから天井を開け直す費用を避けられますし、竣工時の省エネ性能をそのまま使い続けられます。

レイアウトの検討段階でしたら、図面を拝見してのご相談も承っています。工事が始まってからでは動かせないものが多い分野ですので、早期に検討を進めておくことが、より良い計画につながります。


想定読者:建物オーナー、施設管理・総務のご担当者、自治体の営繕ご担当者、内装設計者

参照元:空調・照明・換気設備の一般的な設計実務および運用上の知見に基づく解説。制御の系統区分やセンサーの配置は建物ごとに異なるため、実際の判断には当該建物の設備図(空調系統図・照明配線図・換気系統図)の確認が必要です。個別の製品名・数値は挙げていません。