九月が近づくと、多くの自治体や企業で来年度の予算をどう組むかという話が始まります。省エネ改修は、この時期にどこまで整理できているかで、来年度に動けるかどうかがほぼ決まってしまう分野です。年が明けてから「やはり空調を替えたい」と思っても、そのときには枠が埋まっている。毎年のように伺うお話です。
予算要求には「効果」を添える
改修の要求が通りにくい理由の一つは、工事費だけが数字として並んでしまうことにあります。査定する側から見れば、それは単なる支出です。同じ要求でも、年間の光熱費がどれだけ下がる見込みか、CO2排出量がどれだけ減るのかを併せて示せれば、「何年かけて回収できる支出」として読んでもらえます。
ここで必要になるのが、現況のデータです。直近十二か月分の電気・ガスの使用量と料金、主要な機器の設置年と型番、延べ面積。この三つがそろえば、削減効果の当たりはつけられます。逆に、これがないまま概算だけを出すと、根拠を問われたところで説明が続きません。
補助金と予算のカレンダーはずれている
もう一つ厄介なのが、補助金の時期です。多くの補助制度は年度が始まってから公募が出され、交付決定を受ける前に着工したものは対象外とされます。つまり補助金を当てにする場合、予算を組む段階では制度の中身がまだ確定していない、という状態で数字を置くことになります。
現実的な備え方は、補助金が取れた場合と取れなかった場合で、二通りの姿を考えておくことです。全体を一度にやる案と、効果の大きいところから分けて進める案。この二つを持っておけば、公募の結果が出てから慌てずに済みます。
一度に全部やらない、という選択
予算の制約は、必ずしも悪いことばかりではありません。改修を数年に分ければ、先に手をつけた部分の効果を実測してから次を決められます。たとえば外皮の断熱や日射遮蔽(窓からの日差しを抑える工夫)を先に済ませておくと、その後に更新する空調機の必要能力そのものを小さくできることがあります。順番を考えるだけで総額が変わる場面は、少なくありません。
ただし、分けるなら分けたなりの全体像は要ります。単年度ごとの継ぎ足しでは、同じ天井を何度も開けることになります。
いま、手をつけられること
来年度の予算に何を載せるかを決めるために、大がかりな調査は必要ありません。光熱費の請求書を十二か月分そろえ、機器の一覧を一枚にまとめる。それだけで、議論の出発点は作れます。改修が経済的に見合うかどうかの目安は、当社が公開しているZEBナレッジの「既存建築物ZEB化改修経済性分析ツール」でも簡易に確かめられます(結果は参考情報であり、実際の判断には個別の検討が必要です)。
予算の話は、締め切りが先に来ます。来年度に何かを動かしたいとお考えでしたら、この秋のうちに一度整理しておくことをおすすめします。早めに論点を整理しておくことで、円滑な検討につながります。
想定読者:自治体の施設営繕・財政・脱炭素ご担当者、建物オーナー、施設管理のご担当者、設計者
参照元:予算編成および補助事業の一般的な実務に基づく解説。予算要求の時期は団体・企業により異なります。補助制度の公募時期・交付決定前着工の可否は制度ごとに定めが異なるため、本稿では個別の制度名・期日・金額は挙げていません。ZEBナレッジ「既存建築物ZEB化改修経済性分析ツール」については https://www.zeb.co.jp/knowledge/ の公開情報による。