機器を更新したのに、思ったほど電気代が下がらない。省エネ改修をした建物で時折うかがうお話です。原因が機器そのものではなく、それを動かしている「設定」の側にあることは、珍しくありません。
熱源機や空調機の能力をどう使うかは、中央監視装置や自動制御機器(DDC=現場の制御を担うコントローラ)に書き込まれた設定値が決めています。そしてその多くは、竣工時の試運転調整のときに入力されたまま、今日まで動き続けています。
竣工時の想定と、今の使い方はずれている
設定値は、建物ができた時点で想定していた使われ方をもとに決められます。始業前に空調を立ち上げる時刻、休日のスケジュール、外気の取り入れ量、冷水や温水を送り出す温度。いずれもその当時としては妥当な数字でした。
問題は、建物の使い方のほうが後から変わることです。テナントが入れ替わった。在館人数が減った。会議室が倉庫になった。土曜も一部の部署が出勤するようになった。こうした変化は設定値には反映されません。誰かが意識して直さないかぎり、建物は10年前の前提で動き続けます。
見直しどころは、ほぼ決まっている
現場で確認すると、次のあたりに手つかずの余地が見つかります。
運転スケジュール:実際の在館時間より前後に長く運転していないか。休日カレンダー、年末年始や夏季休暇の設定が実態と合っているか。ここは費用をかけずに直せる代表格です。
最適起動停止制御:室温と外気温から立ち上げ時刻を自動で調整する機能です。付いていても「無効」のまま、あるいは固定時刻運転に切り替えられたまま眠っていることがあります。
送水温度・送風温度:外気温に応じて緩める(リセットする)制御を入れられる設備でも、夏冬とも固定値のまま運転しているケースがあります。負荷の軽い中間期ほど効いてきます。
外気の取り入れ量:在館人数が減っているのに、竣工時の設計風量のまま外気を入れていないか。CO2濃度で制御できる設備なら、その設定が生きているかを確認します。
手動に落としたまま戻っていない箇所:不具合やイベントの対応で一時的に手動・強制運転にした部分が、そのままになっていることがあります。監視画面で一覧すればすぐに見つかります。
秋は検証しやすい季節です
猛暑や厳寒の時期は外気条件の影響が大きく、設定変更の効果が埋もれてしまいます。負荷の穏やかな中間期は、変更の前後を比べやすい時期です。
あわせて、変更内容は必ず記録に残してください。「誰が・いつ・なぜ・どの値をいくつに変えたか」。担当が代わったとき、この記録の有無が建物の運転精度を左右します。
制御機器そのものの更新時期にも注意を
中央監視装置や制御機器は、熱源機や空調機よりも早く更新時期を迎えることが多く、部品供給が終了して修理できなくなる例もあります。更新の際は、既存の設定をそのまま移すのではなく、今の使い方に合わせて見直す好機と考えてください。そうでなければ、更新費用が10年前の前提を延命するだけに終わってしまいます。
設備を入れ替えなくても、設定を実態に合わせるだけで削減できる分は確かにあります。まずは監視画面のスケジュール一覧を印刷し、実際の建物の使われ方と突き合わせてみてはいかがでしょうか。運転データの読み解きや、改修とあわせた制御の見直しについても、お気軽にご相談ください。
想定読者:建物オーナー・施設管理のご担当者、自治体の施設ご担当者、設計者
参照元:本稿は自動制御・中央監視の運用見直しに関する一般的な実務知見をまとめたものです。個々の建物で採用可能な制御機能・設定範囲は導入されている制御システムの仕様によって異なるため、実施にあたっては設備図書および制御機器メーカーの取扱説明書をご確認ください。制御機器の具体的な更新周期・耐用年数については本稿では数値を示していません。