暖房シーズンが近づく今、事務所や庁舎の中で「一年中冷房している部屋」があることを意識されているでしょうか。サーバー室や通信機器室(ネットワーク機器を置く部屋)です。面積は建物全体のごく一部でも、機器が24時間動き続けるため、電気代では存在感のある部屋です。冬を迎える前に見直したいポイントを整理します。
なぜ冬でも冷房が必要なのか
サーバーやネットワーク機器は、使った電力のほとんどを熱として放出します。そのため部屋の中は外が寒い日でも熱がこもり、冷房を止められません。一方、建物全体の暖房は同じ時期に稼働しているので、同じ建物の中で「暖めながら、別の部屋を冷やす」状態が生まれます。
見直しの第一歩は「温度の設定」
意外に多いのが、必要以上に低い設定温度で運用されている例です。機器メーカーは、機器が安定して動作する吸気温度の範囲を示しています。その範囲に対して室温を低くしすぎていないか、まず仕様書で確認します。設定を見直す際は、機器の保証条件や運用ルールを担当者・保守業者と確認したうえで、少しずつ変えて機器の温度を観察するのが安全です。
冷気と排熱を混ぜない
次に効くのが、冷たい空気と機器から出る熱い空気を混ぜないことです。ラックの前面(吸気側)に冷気を、背面(排気側)から熱い空気を回収する配置にそろえ、使っていないラック前面の空きは「ブランクパネル」で塞ぎ、床や天井の余計な隙間も減らします。混ざりが減れば、同じ冷房能力でも必要な冷却が少なくて済み、設定温度を無理なく上げやすくなります。
冬は外気を使える可能性がある
外気が十分に低い時期は、冷凍機やヒートポンプで冷やさず、外気を取り入れて冷却する「外気冷房」が使える場合があります。ただし、ほこりや湿度の影響を受けやすい機器があるため、フィルターや湿度の管理、止めたときの安全側の動作を含めて設計者・メーカーとの検討が必要です。また、サーバー室の排熱をほかの部屋の暖房に回す発想もあります。実現には条件がありますが、建物全体で熱を見る視点は有効です。
ZEBや省エネ計算との関わり
サーバー室は、用途や設備の扱いによって、建築物の省エネ計算でのエネルギー消費量の扱いが異なります。たとえば標準入力法では、データセンター(特化した建築物や室)の電算機室は評価の対象外です。一般の建物の中のサーバー室は、室名と室用途の対応例では「電気室」に分類され、この室用途では空調は計算の対象にならず、換気が計算の対象になります。そのため、サーバー室の専用冷房に使う電力は、計算には表れにくい部分です。ZEBを目指す建物では、機器の電力と専用空調をどう扱うかを設計の早い段階で確認しておくと、後からのズレを避けられます。具体的な扱いは、設計者や評価機関にご確認ください。
暖房シーズン前のチェックリスト
- 室温と機器の吸気温度は、仕様の範囲内でどう推移しているか
- 冷気と排熱が混ざっていないか(空きラック、隙間、配置)
- 専用空調は常時同じ設定のままになっていないか
- 空調機の故障時、機器が止まる前に気づける通知があるか
まとめ
サーバー室は小さな部屋ですが、年間を通じて電気を使い続けます。設定温度、空気の流れ、冬の外気の活用という三つの視点で見直せば、機器の安定運用と省エネを両立できます。まずは、現在の室温と機器の仕様を並べてみることから始めてください。
想定読者:事務所・庁舎・病院・福祉施設などの建物オーナー、施設管理担当者、自治体担当者、設計者
注:本コラムは公開されている資料に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。
参照
- 国土交通省 国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人 建築研究所「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)標準入力法 入力マニュアル Ver.3.10」(2026年4月)、建築研究所「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」に掲載:https://www.kenken.go.jp/becc/building.html (評価の対象外となる室:p.v〜vi、室用途一覧:表1-2-2〜1-2-10〔p.21〜29〕、室名と室用途の対応例:参考B)