冬が近づくと、給水温度が下がり、給湯に使うエネルギーが増えてきます。宿泊施設、福祉施設、病院、学校の給食室、体育施設のシャワーなど、お湯を使う建物では、給湯が一次エネルギー消費量の中で大きな割合を占めることがあります。今回は、設備を入れ替える前にできる確認として、配管からの放熱と保温の見直しを整理します。
お湯は「使う分」だけでなく「運ぶ間」にも失われる
給湯のエネルギーは、水を温めるために必要な分だけではありません。中央式の給湯では、蛇口をひねってすぐお湯が出るように、温水を配管内で常に循環させている建物が多くあります。この循環の間、配管の表面から熱が逃げ続けるため、ほとんどお湯を使わない夜間や休日にも、熱源は損失を補うために運転することになります。
つまり、使用量が少ない建物ほど、「使う熱」より「逃げる熱」の比率が相対的に大きくなる傾向があります。
確認したいポイント
- 保温材の状態:配管やバルブ、ポンプ周りの保温材が、破れ、剥がれ、濡れ、外れで欠けていないか。特にバルブやフランジ(配管のつなぎ目)は、保温を省略されやすい箇所です。
- 貯湯温度と循環温度:必要以上に高い温度に設定されていないか。衛生管理上の下限(レジオネラ属菌対策など)は守る必要があるため、設定を下げる際は、法令・指針や保守業者への確認が前提です。
- 循環ポンプの運転時間:無人の時間帯も常時運転になっていないか。タイマーや制御で止められる系統か、衛生面の影響がないかを確認します。
- 給湯の系統と使用実態:ほとんど使われなくなった系統や、用途が変わった室に、お湯が回り続けていないか。
- 局所給湯の検討余地:使用箇所が少なく離れている場合、中央から送り続けるより、その場で温める方式が合うこともあります。
夜間の熱源運転を見ると分かること
前回までのコラムで触れたベースロードの見方は、給湯にも使えます。夜間や休日に、ボイラーやヒートポンプ、循環ポンプが断続的に動いていないかを確認すると、配管損失の大きさの手がかりになります。ガスや電気の使用量が日別・時間別に見られる場合は、お湯の使用がない時間帯の値に注目してください。
設計・ZEBの視点から
ZEBの一次エネルギー消費量の計算では、給湯も評価の対象です。設計段階では、配管の長さや保温仕様、使用場所の配置が、給湯の損失に影響します。標準入力法(WEBPRO)では、給湯の入力で配管の保温仕様(保温仕様A〜D、または裸管)を選び、主要な給湯配管のうち最も性能の低い部分の仕様で評価されます。保温の欠けた箇所は、計算上の評価にも響くということです。お湯を使う場所をまとめる、熱源を使用場所の近くに置く、といった計画上の工夫は、設備の効率だけでは得られない効果につながります。運用段階でも、設計時の想定どおりに保温や制御が維持されているかを見ることが、実績を設計値に近づける助けになります。
まずは配管を「触らずに見る」ことから
最初の一歩は、機械室や天井内、パイプスペースの配管を目視で点検することです。表面が高温になっている部分は保温が不足している可能性がありますが、やけどの危険があるため、点検は保守業者や有資格者と一緒に、安全に配慮して行ってください。
想定読者:建物オーナー、施設管理担当者、自治体の施設担当者、設計者
注:本コラムは公開されている技術資料に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。
参照
- 国土交通省 国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人 建築研究所「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)標準入力法 入力マニュアル Ver.3.10」(2026年4月)、建築研究所「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」に掲載:https://www.kenken.go.jp/becc/building.html (給湯の配管保温仕様:様式5、p.129〜130)