ビルの空調では、冷温水を送るポンプや、空気を送るファンが、建物が開いている間じゅう回っています。一つひとつの電力は小さく見えても、運転時間が長いため、積み上げると無視できない量になります。今回は、これらの搬送動力と、回転数制御(インバータ制御)の考え方を整理します。
回転数と電力は「3乗」の関係
ポンプやファンには、回転数を下げると、流量(風量)はほぼ比例して減り、軸動力は回転数のほぼ3乗に比例して減るという性質があります(相似則)。たとえば回転数を80%にすると、流量は約80%ですが、動力は約半分(0.8の3乗=約0.51)になる計算です。
これは理論上の目安で、実際の機器では効率の変化や配管抵抗の条件によって差が出ます。それでも、「必要な量だけ送る」ことが、搬送動力の面で有利に働くことは変わりません。
部分負荷が多い建物ほど効く
空調の負荷は、一年を通じて、設計時の最大負荷に達する時間はごくわずかです。多くの時間は、最大よりずっと小さい負荷で運転しています。それにもかかわらず、ポンプやファンが常に定格の流量で回っていると、必要以上の量を運んでいることになります。
- ポンプ:負荷に応じて、冷温水の流量を変える(変流量方式)。
- ファン:室内の負荷に応じて給気風量を変える(変風量方式)。外気の取り入れ量は、CO₂濃度に応じて調整する方法もあります。
流量を固定したまま、バルブやダンパーで絞る方法もありますが、これでは回転数が変わらないため、動力はあまり下がりません。回転数そのものを変えられる点が、インバータの強みです。
導入・運用で確認したいこと
- 制御の目標値が適切か:差圧や温度差の設定が、実際の使い方に合っているか。
- 下限回転数:機器を保護するための最低回転数や、必要な風量(換気量)が確保されているか。
- 手動運転になっていないか:試運転や不具合対応で固定運転にして、そのまま戻されていないケースがあります。
- 効果の確認:電力量を時間別に見られる場合、導入前後や、負荷の小さい時期の値を比較します。
換気風量を下げる場合は、法令で求められる必要換気量や室内環境を満たすことが前提です。設定変更は、設計者や保守業者と確認してから行ってください。
設計・ZEBの視点から
ZEBの一次エネルギー消費量の計算では、ポンプや送風機の搬送エネルギーも評価の対象です。標準入力法(WEBPRO)では、二次ポンプの「流量制御方式」と空調機の「風量制御方式」で、それぞれ回転数制御を選ぶと、その効果が計算に反映されます。ただし、手動で風量を切り替える方式は回転数制御に含まれず、一次ポンプは変流量制御をしていても定流量として計算されます。設計段階での採用に加え、運用段階で制御が意図どおり働いているかを確認することが、設計値と実績の差を縮める助けになります。
まずは「いつも同じ音で回っていないか」から
機械室で、ポンプやファンが季節や時間帯にかかわらず同じ状態で回っているなら、見直しの余地があるかもしれません。まず、制御盤の表示や設定を、保守業者と一緒に確認してみてください。
想定読者:建物オーナー、施設管理担当者、自治体の施設担当者、設計者
注:本コラムは公開されている技術資料に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。
参照
- 国土交通省 国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人 建築研究所「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)標準入力法 入力マニュアル Ver.3.10」(2026年4月)、建築研究所「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」に掲載:https://www.kenken.go.jp/becc/building.html (二次ポンプの流量制御方式:様式2-6、空調機の風量制御方式:様式2-7、p.90〜91、一次ポンプの扱い:p.72)