学校、スポーツ施設、福祉施設などにある屋内プールは、建物の中でも単位面積あたりのエネルギー使用量が大きくなりやすい用途です。秋から冬へ向かうこの時期は、加温や暖房の負荷が増えてくるため、運用を見直す好機です。

なぜプールはエネルギーを使うのか

屋内プールの熱の出入りは、主に次の三つに分けられます。

  • 水面からの蒸発:水が蒸発するときに、水から大量の熱(蒸発潜熱)が奪われます。
  • ろ過・循環と補給水:循環水の加温、減った分の補給水の加温が必要です。
  • 室内の空調・除湿:蒸発した水分で湿度が上がるため、換気や除湿、暖房が欠かせません。

この三つは互いにつながっています。蒸発が多いほど、水の加温負荷も、除湿・換気の負荷も増えるのが特徴です。

見直したい三つの設定

1. 水温と室温の関係

水温に対して室温が低すぎると、蒸発が促されやすく、利用者も寒く感じます。逆に、室温を水温よりやや高めに保つ運用は、蒸発や結露を抑える考え方として知られています。ただし適切な値は施設の用途(学校の授業、リハビリ、一般利用など)や利用者によって異なります。設定を変える場合は、設計者や保守業者に確認してください。

2. 湿度と換気量

湿度が高すぎるとカビや結露、建材の傷みにつながります。一方で、換気や除湿を過剰に行うと、そのぶんエネルギーを使います。利用のない時間帯まで同じ換気量で運転していないか、確認してみてください。

3. 夜間・休業日の水面

利用のない時間帯は、プールカバーで水面を覆うと、蒸発や放熱を抑えられるとされています。あわせて、夜間は室内の温湿度の設定を緩められるかも検討の余地があります。

熱を捨てている場所を探す

  • 排気(湿った暖かい空気)から熱を回収できないか(全熱交換器・熱回収ヒートポンプなど)。
  • 循環水や排水の熱を使い直せないか。
  • 屋根・外壁・窓の断熱や、窓の結露の状況はどうか。

設備更新の際には、こうした熱回収を一緒に検討すると、効果を出しやすくなります。

設計・ZEBの視点から

標準入力法の室名と室用途の対応例では、屋内プールは学校等の「講堂又は体育館」に含まれています。また、プールの水を温める循環加温は給湯の評価対象外で、シャワーや洗面のお湯だけが対象です。そのため、プールでは計算上の評価と実際のエネルギー使用量に差が出やすくなります。設計段階では、運用条件(水温・室温・利用時間)を施設管理者と共有しておくことが、設計値と実績の差を小さくするコツです。

まずは「検針値」から

水温・室温・湿度の設定値と、電気・ガス・水道の使用量を月別に並べてみてください。利用者数が同じ時期の前年と比べると、運用の変化が見えてきます。


想定読者:建物オーナー、スポーツ・福祉施設や学校の施設管理担当者、自治体の施設担当者、設計者

注:本コラムは公開されている技術資料に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。

参照

  • 国土交通省 国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人 建築研究所「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)標準入力法 入力マニュアル Ver.3.10」(2026年4月)、建築研究所「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」に掲載:https://www.kenken.go.jp/becc/building.html (屋内プールの室用途の対応例:参考B、p.187、設備別の評価対象:p.viii〜xi)