省エネの見直しというと、日中の空調や照明に目が向きがちです。しかし、建物の電力使用量を30分ごとのグラフで眺めると、夜間や休日にも一定の電気が使われ続けていることに気づきます。この「人がいなくても流れ続ける電力」を、ベースロード(基底負荷)と呼びます。今回は、設備投資をほとんどかけずに始められる、ベースロードの見方と見直しの進め方を整理します。
ベースロードとは何か
ベースロードとは、建物が最も静かな時間帯(深夜や休日の未明など)に消費している電力の下限のことです。ここには、サーバーや通信機器、冷蔵・冷凍設備、常時点灯の照明、待機状態のOA機器、換気ファンや給湯設備の保温など、止めにくいものも止め忘れたものも混ざっています。
建物の使い方が変わらない限り、ベースロードは毎日ほぼ同じ形で積み上がります。そのため、小さな無駄でも年間では大きな量になりやすい点が特徴です。
見える化の手順
まず、電力会社のスマートメーターのデータや、デマンド監視装置のグラフなど、すでに手元にあるデータを確認します。多くの場合、新たな計測機器は要りません。
次に、平日・土日・祝日の夜間のグラフを重ねて見ます。深夜の線がどのあたりで平らになっているか、休日と平日の夜で差があるかを確認します。休日の夜が平日の夜より下がっていなければ、止められる設備が動き続けている可能性があります。
最後に、現場を巡回して、夜間に動いている設備を洗い出します。グラフの数値と実際の機器をつなげる作業が、見直しの一番の近道です。
見直しの候補
- 空調・換気の運転時間:無人の時間帯に、換気ファンや空調が動いていないかを確認します。タイマーの設定違いは意外とよくあります。
- 照明:廊下や階段、倉庫、駐車場の照明が終夜点灯になっていないか。人感センサーや時刻制御の対象にできるかを検討します。
- OA機器・自販機・給湯器:電源タップのスイッチや、タイマー、保温設定の見直しで減らせる場合があります。ただし、止めてよいかどうかは用途ごとに確認が必要です。
- 熱源・ポンプ類:循環ポンプや補機が、負荷がないのに回り続けていないかを点検します。
止めてはいけないものに注意
サーバー、防災・防犯設備、医療・研究用の冷蔵設備などは、止めると業務や安全に影響します。見直しの対象にする前に、必ず担当部署や保守業者に確認してください。また、空調や換気の運転を変える際は、結露やカビ、冬季の凍結防止といった副作用がないかも合わせて確認します。
設計・ZEBの視点から
ZEBの設計では、一次エネルギー消費量を計算によって評価しますが、運用段階で夜間や休日の電力が想定より大きいと、設計時の見込みと実績にずれが出る原因になります。竣工後にベースロードを確認する習慣は、設計通りの省エネ性能を発揮させるための運用上のチェックにもなります。
まずは1枚のグラフから
最初の一歩は、直近1か月の電力使用量のグラフを、夜間と休日に注目して眺めてみることです。「この時間、この線の高さは何の電気だろう」と問いを立てるだけで、見直しの糸口が見つかることがあります。
想定読者:建物オーナー、施設管理担当者、自治体の施設担当者、設計者
注:本コラムは、建築環境工学・省エネ設計の一般的な知見に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。