朝晩の冷え込みが増し、始業時に室内が冷えきっている日が出てきました。多くの建物では「始業のずっと前から暖房を入れておく」運用が当たり前になっていますが、この立ち上げの時間帯は、実は省エネの見直し余地が残りやすい場面です。今回は、予熱(暖房の立ち上げ運転)の考え方を整理します。

立ち上げ時は「負荷が大きく、人がいない」

夜間に冷えた建物は、壁や床、什器まで冷たくなっています。これらを暖めるために、朝の空調は最も大きな能力を必要とします。一方で、この時間帯は在室者がまだいません。つまり「負荷は大きいのに、換気の必要性は低い」という特徴があります。

見直しのポイント

  • 起動時刻の設定:「毎日同じ時刻に起動」としていると、暖かい日は必要以上に早く暖め始めてしまいます。外気温や前日の室温に応じて起動時刻を調整できる機能(最適起動制御)を持つ機器もあります。
  • 予熱中は外気の取り入れを止める:人がいない予熱時間中は、換気のための外気を取り込まなくても支障が少ない場合があります。冷たい外気を暖め直す手間が省けるため、立ち上げ負荷を減らす方法として知られています。外気導入ダンパ(空気の取入口の開閉弁)を、予熱中は閉じる設定にします。
  • 設定温度の確認:予熱中に設定温度を高くし過ぎると、能力が頭打ちになるだけでなく、始業時に暖めすぎてしまうことがあります。

注意したい点

外気を止める場合は、始業時刻までに必ず通常の換気に戻す設定が必要です。戻し忘れると、室内の空気環境が悪化します。また、機器の仕様や制御盤の構成によっては、設定の変更ができない場合もあります。運用を変える際は、設計者や保守業者に機器の制御仕様を確認してください。

また、建物の断熱性や気密性が低いと、せっかく暖めた熱が夜の間に逃げやすく、予熱時間が長くなります。外皮の性能改善は、立ち上げ時間そのものを短くする根本的な対策でもあります。

設計・評価の面から

建築物省エネ法の一次エネルギー消費量の計算のうち標準入力法(WEBPRO)では、空調機の入力項目に「予熱時外気取り入れ停止の有無」があります。立ち上がり時の在室がない時間帯に外気の導入を止める制御(外気カット制御)を「有」とすると、その効果が計算に反映されます。

まずは現状把握から

最初の一歩は、自分の建物の空調が「何時に起動し、予熱中に外気を入れているか」を確認することです。運転スケジュールの設定画面や、機器の制御仕様書で確認できます。運用の工夫は設備投資がほとんど要らないため、冬本番の前に点検しておく価値があります。


想定読者:建物オーナー、施設管理担当者、自治体の施設担当者、設計者

注:本コラムは公開されている技術資料に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。

参照

  • 国土交通省 国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人 建築研究所「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)標準入力法 入力マニュアル Ver.3.10」(2026年4月)、建築研究所「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」に掲載:https://www.kenken.go.jp/becc/building.html (空調機の「予熱時外気取り入れ停止の有無」:様式2-7、p.91)