前回は、ZEBを実現した建物で採用されている技術や、外皮・省エネ性能の水準を確認できる「ZEB技術の分析」をご紹介しました。今回は、ZEBナレッジのもう一つのツール「ZEB実績データ分析」を取り上げます。設計段階の計算値と、建物が実際に使われた後の実績値を並べて見られるのが特徴です。

設計値と実績値、二つの数字

ZEBの省エネ性能は、設計段階では「一次エネルギー消費量」(電気・ガスなどを、発電に必要な燃料の量まで含めて共通の単位で表したもの)のシミュレーションで評価します。ただ、シミュレーションはあくまで想定条件での計算です。「実際に使い始めたら計算どおりになるのか」という疑問は、建物オーナーや自治体の担当者から出やすい点だと思います。

ZEB実績データ分析は、ZEB実証事業で公開されているデータを使い、設計時の計算値と運用後の実績値を比較できるツールです。

見えてくること

ZEB実績データ分析(2026年4月4日更新)では、SIIのZEB実証事業の公開データから194棟のZEB認証建築物を分析しています。創エネや計算対象外の消費(事務機器など)を除いた一次エネルギー削減率は、設計時の平均54.5%に対し、実績の平均は67.8%でした。実績の削減率が設計時を上回った建物は194棟中193棟(99.5%)にのぼり、設計時の一次エネルギー消費量の計算は、多くの場合、安全側の見立てになっていることが公開データから読み取れます。

活用のヒント

建物オーナーへの説明では、「シミュレーションの数字は机上の理屈ではないのか」という不安に対し、実際の建物で計算と実績がどう違ったかを説明する際の参考になります。設計者にとっては、自らが行う一次エネルギー消費量計算の妥当性を考える手がかりになります。自治体が公共施設のZEB化を検討する際にも、庁内で説明する際の参考になるでしょう。

読むうえでの注意点

公開データの対象は、ZEB実証事業の枠組みで公開された建物です。すべてのZEB建物の実績を代表するものではありません。また、実績値は運用方法・稼働時間・天候・入居状況などで変わります。個別の建物で同じ結果が得られると保証するものではないため、あくまで傾向を把握する参考情報として、設計時の検討と併せてご覧ください。

次回は、既存建築物のZEB化改修の経済性を簡易にシミュレーションできる「簡易既存建築物ZEB化改修経済性分析ツール」をご紹介します。


想定読者:建物オーナー、自治体施設担当者、設計者

データのご利用について

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