「最上階の会議室だけ、どうしても冷房が効かない」「天井から熱が落ちてくる感じがする」。残暑のこの時期、こうした相談を受けることがよくあります。原因の多くは、屋根の断熱が現在の水準に届いていないことにあります。

前回は窓の改修を取り上げました。窓と並んでもうひとつ手を付けやすいのが屋根です。しかも屋根には、防水の更新時期という「工事の口実」があるという他の部位にない利点があります。

屋根の熱は昼だけの問題ではない

日射を受け続けた屋根スラブ(屋根の構造躯体)は熱をため込み、日が落ちてからもゆっくりと室内側へ放出します。最上階が夕方以降も暑い、朝から室温の高い状態で空調が始まる、といった現象はこれによるものです。屋根面積が床面積に対して大きい平屋の庁舎・体育館・工場・倉庫では、影響がとりわけ大きくなります。

以前ご紹介した遮熱塗料や屋上緑化は、屋根の「表面」で日射を受け止める対策です。これに対し断熱改修は、躯体を通って伝わる熱そのものを減らすもので、夏の日射だけでなく冬の熱損失にも効きます。役割が違うので、組み合わせて考えるのが基本です。

防水改修は断熱を足す好機

陸屋根(平らな屋根)の防水層には耐用年数があり、いずれ改修が必要になります。この工事では足場・仮設・既存層の処理といった費用が発生しますが、その同じ工事の中で断熱材を追加すれば、共通する費用を二度払わずに済みます。防水を直したばかりの屋根に後から断熱を足そうとすると、防水層をもう一度いじることになり、費用も納まりも不利になります。

改修方式は、既存防水層を撤去する方式と、上から新しい層をかぶせる方式に大きく分かれます。どちらを採るかは既存層の劣化状態や下地の含水状況で決まるため、現況調査が出発点になります。

検討時に確認しておきたいのは次の点です。

  • 荷重:断熱材・保護層を追加した分の重量を構造が許容できるか
  • 納まり:屋根面が上がることでパラペット(立ち上がり)の高さや排水口、扉の下端に支障が出ないか
  • 設備との干渉:屋上の室外機・受水槽・太陽光パネルの撤去・復旧の手順と費用
  • 屋根側か天井側か:天井裏を空調しない倉庫のような使い方なら天井断熱、屋上の将来利用や小屋裏の設備を考えるなら屋根断熱、と結論は建物ごとに分かれます

「暑さの苦情」を計画に変える

屋根の断熱改修は、省エネ計算上は外皮性能の改善として冷暖房負荷を下げます。同時に、最上階の温熱環境という利用者が体感できる不満の解消にも直結します。数字と苦情の両方に効くため、社内や議会で説明しやすい改修でもあります。

大切なのはタイミングです。次の防水更新がいつ来るかを把握しておけば、そのときに断熱・遮熱・太陽光をまとめて検討できます。長期修繕計画をお持ちの建物では、屋根の欄に「断熱の検討」と一行書き足しておくことをおすすめします。


想定読者:建物オーナー、自治体の施設・脱炭素ご担当者、設計者