省エネとCO₂削減は同じことのように語られがちですが、評価の物差しは実は別物です。ZEBの省エネ性能を表すBEIと、企業や自治体が問われるCO₂排出量の関係を整理します。
BEIが測っているのは「エネルギーの量」
ZEBの評価指標であるBEI(Building Energy Index、基準一次エネルギー消費量に対する設計一次エネルギー消費量の比率)は、標準的な使い方を前提に、建物が設計上どれだけのエネルギー(一次エネルギー換算)を消費するかを測る指標です。実際の使用量(実績値)ではなく、設計段階の計算値である点にも注意が必要です。断熱改修や高効率な空調・照明の導入でBEIを下げることはできますが、この数値自体は電力会社の電源構成(火力・原子力・再生可能エネルギーの比率)を反映していません。
CO₂排出量を決めるのは「排出係数」
実際のCO₂排出量は、使用した電力量(kWh)に、電力会社ごとに定められる「排出係数」(kg-CO₂/kWh)を掛け合わせて算出されます。この係数は各社の電源構成によって異なり、環境大臣・経済産業大臣が毎年公表する電気事業者別の排出係数(基礎排出係数・調整後排出係数)として、温対法に基づく温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度で用いられています。つまり、使用電力量を1kWhも減らさなくても、排出係数の低い電力メニューへの切り替えや再エネ電力証書の活用によって、CO₂排出量だけを引き下げることができます。
現場で混同しやすい点
ZEBの省エネ性能評価(BEI)は一次エネルギー消費量で行い、電気は全国一律の一次エネルギー換算係数で換算します。CO₂の排出係数は計算に使われないため、電力の調達先を変えてもBEIの数値は変わりません。一方、企業の脱炭素目標やCDP開示などで問われるScope2排出量をマーケット基準で算定する場合は、実際に契約している電力の排出係数が直接効いてきます。この違いを知らないと、「ZEB認証を取ったのにCO₂排出量の報告が改善しない」「電力契約を変えただけなのに大きくCO₂が減った」といった数字のズレに戸惑うことになります。
両輪で考える
建物の省エネ改修(使う量を減らす)と、電力調達の見直し(排出係数を下げる)は、目的も評価軸も異なりますが、脱炭素経営を進めるうえではどちらも欠かせません。改修計画を立てる際は、まずBEIやBELSでエネルギー使用量そのものを削減する施策を検討し、そのうえで契約電力メニューや再エネ証書の活用を組み合わせることで、省エネ性能と排出量削減の両方の目標に整合的に応えられます。
想定読者:建物オーナー・自治体担当者・設計者(省エネ改修とCO₂排出量報告の両方に関わる方)
注:本コラムは公開されている制度資料に基づく概説です。排出量の算定方法は報告制度や開示基準ごとに定められているため、個別の算定は各制度の算定方法をご確認ください。
参照
- 環境省「算定方法・排出係数一覧」(温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度):https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/calc.html (電気事業者別排出係数一覧の掲載先)
- 環境省 報道発表「令和6年度の電気事業者ごとの基礎排出係数(非化石電源調整済)・調整後排出係数等の公表について」(2026年1月9日):https://www.env.go.jp/press/press_02235.html (他人から供給された電気の使用に伴うCO₂排出量は、環境大臣及び経済産業大臣が公表する基礎排出係数・調整後排出係数を用いて算定すること)