高効率な機器を入れても、フィルターや熱交換器が汚れていれば、その性能は発揮されません。暖房を本格的に使い始める前のこの時期は、空調機まわりの清掃と点検をするのに向いたタイミングです。大きな費用をかけずにできる、基本的な省エネ対策として整理します。
汚れると、なぜ余計に電気を使うのか
空調機は、室内の空気をフィルターと熱交換器に通して熱をやり取りします。フィルターが目詰まりすると風量が落ち、同じ能力を出すために機器が余分に働くことになります。室外機も同様で、熱交換器(フィン)にほこりや落ち葉、油分が付いたり、吹出口の前に物が置かれたりすると、熱を外へ出し入れしにくくなります。結果として、効きが悪くなる、運転時間が延びる、といった形で電力量に表れます。
室内機側の点検ポイント
- フィルター:目視で汚れを確認し、定期的に清掃する。厨房に近い場所や、人の出入りが多い場所は汚れが早い傾向があります。
- 吸込口・吹出口:ふさがれていないか。棚や書類、観葉植物などで気流が妨げられていることがあります。
- ドレンパン・熱交換器:専門業者による洗浄が必要な部分です。異臭や水漏れがあれば早めに相談を。
室外機側の点検ポイント
- 周囲の空間:吸込側・吹出側に障害物がないか。室外機を囲うように置かれた資材や、積もった落ち葉・雪には注意が必要です。
- 熱交換器の汚れ:ほこり、綿毛、油汚れなどが付着していないか。
- ショートサーキット:吹き出した空気を同じ機器が再び吸い込む状態になっていないか。設置後に周囲へ壁や機器が増えて起きることもあります。
- 冬季の着霜・融雪:寒冷地や冷え込む地域では、霜取り運転の頻度が運転効率に影響します。積雪で吹出口が埋まらないかも確認します。
記録しておくと効果が見える
清掃日や点検結果を記録し、可能であれば清掃前後の電力量や室温の立ち上がりを比べておくと、効果を判断しやすくなります。ただし、気温や利用状況が毎日違うため、単純な比較では結論を出しにくい点は踏まえてください。サブメーターや電力の見える化が入っている建物なら、判断の材料になります。
清掃の頻度は「現場で決める」
適切な頻度は、用途・設置環境・運転時間によって変わります。機器の取扱説明書や保守契約の内容を確認しつつ、まずは汚れの進み方を数回観察して、無理のない周期を決めるのが現実的です。高所や天井カセット形の作業は、安全面から専門業者に任せてください。
設計の段階でできること
保守しやすさは、設計時にも織り込めます。点検口の位置、室外機まわりの作業スペース、フィルターに手が届く高さなどを最初から考えておけば、運用後の清掃が続きやすくなります。省エネ性能は、設計値だけでなく「保てる運用」とセットで考えたいところです。
想定読者:建物オーナー、施設管理担当者、自治体の施設担当者、設計者
注:本コラムは、建築環境工学・省エネ設計の一般的な知見に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。