2026年8月末、各省庁から令和9年度(2027年度)予算の概算要求が公表されました。環境省の「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」は要求額115億円と、資料に示された前年度額(67億円)から大きく増えています。ただし、概算要求はあくまで「要求」で、金額や要件は年末の政府予算案、春の予算成立を経て確定します。それでも、どのメニューが続き、何が要件として求められそうかは、この時点でかなり読み取れます。来春の公募で慌てないために、今冬のうちに準備しておきたいことを整理します。

概算要求とは何か ― 「決定」ではなく「方向性」

概算要求は、各省庁が翌年度に必要とする予算を財務省に提出するものです。例年、次のような流れで進みます。

  • 8月末:概算要求の提出・公表
  • 9月〜12月:財務省の査定、政府内の調整
  • 12月下旬:政府予算案の閣議決定
  • 1月〜3月:国会審議、予算成立
  • 4月以降:執行団体による公募要領の公表、公募開始

要求額がそのまま認められるとは限らず、補助率や要件が変わることもあります。一方で、事業の枠組みや求められる性能水準は、要求段階の資料から大きく変わらないことが多く、準備の方向性を決める材料としては十分に役立ちます。

環境省のZEB関連事業 ― 主なメニュー

環境省の「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」(要求額115億円)の資料では、建築物のZEB化に関して次のようなメニューが示されています(金額・補助率はいずれも要求段階のもの)。

メニュー補助率主な要件(資料より)
低炭素型建材活用新築ZEB支援1/4〜2/3ZEB Ready以上(事務所等以外はZEB基準水準)、再エネ設備、エネルギー管理体制、低炭素型建材の導入、ライフサイクルカーボンの算定
業務用建築物の脱炭素改修加速化1/3、1/2改修後の外皮性能BPI 1.0以下、ZEB基準水準、運用改善。設計費も対象
業務用建築物ストックの省CO2改修調査1/2(上限100万円)ZEB達成可能性や省CO₂効果の調査
躯体活用型ZEB化改修支援1/3〜2/3既存躯体を活かし新築並みの耐用年数に延ばす改修。ライフサイクルカーボン等の算定、一定の耐震性など
躯体活用型ZEB化改修調査1/2(上限1,000万円)ZEB化と躯体活用の同時実現の可能性調査

このほか、テナントビルや民間建築物の省CO₂改修、クーリングシェルター向けの高効率空調導入など、熱中症対策・防災と省CO₂を組み合わせたメニューも並んでいます。

用語を補足すると、BPI(Building Palstar Index)は外皮(壁・窓・屋根など)の断熱・日射遮蔽性能を基準と比べた指標で、1.0以下なら基準以上の性能を意味します。ZEB基準水準は、一次エネルギー消費量を省エネ基準から用途に応じて30%または40%程度以上削減する水準です。ライフサイクルカーボンは、建物の資材製造から施工、運用、解体までに出るCO₂の総量を指します。

読み取れる三つの流れ

(1) 新築より「既存建築物の改修」に重心
メニューの多くが既存建築物向けで、とくに「業務用建築物の脱炭素改修加速化事業」は要求額67億円(資料の括弧内の前年度額は40億円)と増額要求です。断熱窓や断熱材による外皮改修と、高効率空調・照明・給湯の導入をセットで行う改修が想定されています。

(2) 「設備更新だけ」では届きにくい
改修メニューでBPI 1.0以下が求められている点は重要です。空調機の入れ替えだけでなく、窓や断熱の改修を組み合わせる計画が前提になります。外皮改修は工期も費用もかかるため、早めの検討が欠かせません。

(3) 「建てた後」と「生涯」の評価
エネルギー管理体制や運用改善、ライフサイクルカーボンの算定が要件に入っています。省エネ性能の計算だけでなく、運用の仕組みやライフサイクル全体のCO₂まで説明できることが求められる流れです。

今冬のうちに進めたい準備

公募期間は短いことが多く、たとえば環境省の「既存建築物のZEB化普及促進支援事業(令和7年度補正)」の公募は、2026年3月31日から5月12日までの約6週間でした。公募が始まってから設計や見積を始めると、間に合わないことがあります。今の時期に次の準備を進めておくと安心です。

  1. 現状把握:直近数年分のエネルギー使用量、設備の更新時期、竣工図・設備図の所在を確認する
  2. ZEB化の可能性の概算:外皮と設備の改修でBEI(一次エネルギー消費量の基準比)とBPIがどこまで下がりそうか、省エネ計算で目安をつける。調査費を補助するメニューの活用も選択肢です
  3. 工程の逆算:公募時期、交付決定、工事期間、年度内完了の要否を並べ、テナントや利用者への影響が少ない工事時期を検討する
  4. 社内・議会の手続き:民間では投資判断、自治体では予算措置や議会日程を、公募時期に合わせて準備する
  5. 運用体制の検討:エネルギー管理の担当や計測の方法など、補助要件となりうる運用面も事前に決めておく

なお、年末にかけて補正予算が組まれ、前倒しで公募される事業が出ることもあります。各省庁や執行団体の発表を定期的に確認しておきましょう。

まとめ

令和9年度の概算要求からは、既存建築物の改修、外皮と設備のセット改修、運用とライフサイクルでの評価という方向性が読み取れます。金額や要件は年末から春にかけて確定しますが、現状把握や省エネ計算による概算、工程の逆算は今から始められます。来年度の改修や新築を検討している方は、この冬を「計画を固める期間」として活用してみてはいかがでしょうか。


想定読者:建物オーナー、自治体の施設担当者、設計者

注:本文中の金額・補助率・要件は概算要求段階の資料に基づくもので、今後の予算編成や公募要領で変更される可能性があります。

参照