日が短くなり、照明を点けている時間が少しずつ長くなる季節です。LED化を済ませた建物でも、「そもそも、この明るさは必要なのか」という問いは意外に見落とされています。今回は、照度(床や机の面がどれだけ明るいかを表す値。単位はルクス)を実際に測って、照明の省エネにつなげる考え方を整理します。
明るさは「足りない」だけでなく「余る」ことがある
照明の明るさは、設計時に用途ごとの推奨照度(JIS Z 9110などで目安が示されています)を参考に決められるのが一般的です。ところが、竣工後に次のようなことが起きます。
- レイアウト変更や間仕切りの撤去で、必要以上に明るい場所ができた
- 壁や天井の仕上げが明るい色で、反射した光が加わっている
- 窓ぎわでは、日中に外光だけで十分な明るさがある
照明は消費電力がそのまま光の量に結びつきやすい設備です。余った明るさは、そのまま余った電気代になります。
まず、照度計で測ってみる
照度計は比較的手に入れやすい計測器です。次の手順で、現状を「見える化」できます。
- 机上面など、作業をする高さで測る(床面や天井近くでは比べられません)
- 窓ぎわ・中央・奥など、数か所を測る
- 昼と夕方、照明を点けた状態と消した状態の両方を測る
日中の窓ぎわで、照明を消しても作業に十分な明るさが残っているなら、その列だけ別回路にして消灯・減光できる可能性があります。回路が分かれていない場合は、改修の検討材料になります。
見直しの選択肢
- 調光・明るさ補正:器具に調光機能があれば、設定を下げられるか確認する
- 消灯ルールの細分化:窓ぎわ、通路、休憩スペースなどで点灯範囲を分ける
- 間引き:過剰な箇所の器具を外す。ただし、均一性や安全面(通路・階段)への影響を確認してから
- タスク・アンビエント照明:全体は控えめにし、手元だけを明るくする方式
なお、必要な明るさは作業内容や利用者の年齢などで変わります。省エネだけを理由に下げすぎず、使う人の声も聞きながら進めてください。また事務所では、事務所衛生基準規則により、作業面の照度を一般的な事務作業で300ルクス以上、付随的な事務作業で150ルクス以上とすることが求められています(2022年12月施行)。
数字を持って説明する
測定結果を、図面上にメモしておくと、建物オーナーや利用者の方への説明材料になります。「この場所は、基準の目安よりかなり明るい」という事実が分かれば、運用変更への理解も得やすくなります。
照明の省エネは、高効率な器具に替えることだけではありません。「必要な場所に、必要な明るさを」届けているかを確かめることも、効果的な一歩です。
想定読者:建物オーナー、施設管理担当者、自治体の設備担当者、設計者
注:本コラムは公開されている資料に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。
参照
- 厚生労働省「職場における労働衛生基準が変わりました」(事務所衛生基準規則等の改正パンフレット):https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000905329.pdf (作業面の照度基準〔事務所則第10条〕、個々の作業に応じた照度はJIS Z 9110の推奨照度を参照すること)