日が暮れるのが早くなり、定時後の暖房運転が気になる季節になりました。夜に数人が残っているだけなのに、フロア全体、あるいは建物全体の空調が動き続けている。そんな運用は、決して珍しくありません。今回は、時間外の空調を「必要な範囲だけ」にする考え方を整理します。
時間外運転は、範囲が大きいほど無駄が出る
空調は、使う人数に比例してエネルギーを使うわけではありません。空調機が動けば、無人の席や会議室も含めて、その系統の空気を暖め続けます。さらに、熱源機や一次側のポンプ・ファンも、少ない負荷のために動くことになります。負荷が小さい運転は効率が下がりやすい傾向があるため、「少人数のための全館運転」は割高になりがちです。
見直しの入口は3つ
- 運転の単位を知る:時間外に動かせるのは、建物全体か、フロアか、ゾーンか、部屋か。空調の系統と、操作できる最小単位を、まず図面や機器表で確認します。
- 申請と自動停止の仕組み:延長運転を押しボタンやタイマーで「1時間だけ」などと区切れる設定にすると、消し忘れを防げます。中央監視がある場合は、延長の履歴から、どの時間帯・どの系統がよく使われているかも見えてきます。
- 残る場所を寄せる:残業する部署を一つのフロア・ゾーンにまとめられると、止められる範囲が広がります。運用ルールとして決めておく方法です。
設備側で変えられること
系統が大きく、ゾーンを分けられない建物では、一部の部屋に個別空調(パッケージエアコンなど)を追加する、延長運転用の操作盤を設ける、といった改修も選択肢になります。ただし、効果は建物の系統や使われ方で大きく変わるため、最初から改修ありきではなく、実際の運転時間と使用量を確かめてから検討するのが現実的です。
まず「実際の時間外運転」を確かめる
中央監視や計量の記録から、定時後に空調機がどの系統で何時間動いているかを一度書き出してみてください。電力量を30分単位で確認できる場合は、夕方以降の下がり方も手がかりになります。数字が整理できれば、建物オーナーや利用者の方へ、運用ルールの変更を提案する根拠にもなります。
時間外の空調は、快適性と省エネのどちらかを選ぶ話ではなく、「誰のために、どこまで動かすか」を決める話です。
想定読者:建物オーナー、施設管理担当者、自治体の設備担当者、設計者
注:本コラムは、建築環境工学・省エネ設計の一般的な知見に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。