「店は明るさが命。営業時間も長い。省エネで暗くなったら客足が遠のく」――小売業のオーナーからよく伺う心配です。たしかに、明るさや快適さを削るのは本末転倒。ですがZEB化は「我慢」ではなく「置き換え」でできる部分が多く、店舗はその効果が出やすい業態でもあります。
用途分類は「物販店舗等」
建築物省エネ法では、非住宅の建物を事務所等・病院等・学校等・飲食店等・工場等・ホテル等などの用途に分けて評価し、物を販売する店舗は「物販店舗等」に区分されます。ZEBの判定に使うBEI(設計一次エネルギー消費量を基準値で割った指標。小さいほど省エネ)も、この用途ごとの標準的な使い方を前提に計算します。評価の対象になる設備は、空調・換気・照明・給湯・昇降機の5つです。
エネルギーの主役は、照明と空調
物販店舗は、商品を魅力的に見せるために照明を多く使います。省エネ法が評価する5設備のなかでも照明の存在感が大きいのが特徴です。加えて、出入口の開閉が多く外気が入りやすいため、空調の負荷も無視できません。まずはこの二つが効かせどころになります。
効かせる順番
照明はLED化と、売り場に応じた調光・センサー制御が王道です。全体を一律に明るくするのではなく、商品を照らす「見せる灯り」と通路の「歩く灯り」を分けて設計すると、明るさの印象を保ったまま消費電力を下げられます。空調は高効率機への更新に加え、出入口のエアカーテンや風除室で外気の侵入を抑えるのが定番。外皮の断熱と日射遮蔽は、光熱費だけでなく窓際の暑さ・寒さのクレーム低減にもつながります。
対象外だけれど、見逃せない負荷
食品スーパーやコンビニでは、冷凍・冷蔵ショーケースの電気が空調に匹敵、時にそれを上回ることもあります。これはBEIの評価対象外ですが、実際の電気代では大きな比重を占めます。ショーケースの高効率化やナイトカバー、排熱の給湯利用などは、ZEBの計算に載らなくても運用コストにしっかり効きます。数字上のZEBと実際の光熱費削減は分けて考えると、投資判断を誤りません。
多店舗展開は、省エネの追い風
店舗は同じ仕様を横に展開できるのが強みです。一店舗で確かめた省エネ仕様を標準図に落とし込めば、改装や新規出店のたびに効果が積み上がります。省エネ性能表示制度(建物の燃費ラベル)やZEB認証は、環境配慮を重視する顧客・地域への訴求にもなり、集客とブランド価値の面からも意味のある投資になります。
まずは自店の電気代のうち、照明、空調、冷凍・冷蔵ショーケースがそれぞれどれくらいを占めているのか。その内訳を知ることが、費用対効果の高い一手を選ぶ出発点になります。
想定読者:物販店舗・商業施設を運営する経営者および店舗・設備担当者、店舗を手がける設計者、商業施設や地域振興に関わる自治体担当者
参照元:環境省 ZEB PORTAL「ZEBの定義」(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html)、国土交通省 建築物省エネ法の用途区分・BEIの考え方に関する公表資料。BEIの評価対象は空調・換気・照明・給湯・昇降機であり、冷凍冷蔵ショーケース等の負荷は評価対象外です。用途ごとの評価条件は個別条件により判断が分かれる場合があるため、具体の計画にあたっては所管行政庁・省エネ適判機関等にご確認ください。