冬のオフィスで、「暖房が効いているのに、ときどき風がぬるくなる」「室外機から白い湯気が出ている」といった声を聞くことがあります。故障と心配される方もいますが、多くの場合は空調機が正常に行っている「霜取り(除霜)運転」です。仕組みを知っておくと、無用な設定変更や問い合わせを減らし、省エネの見直しにも役立ちます。

なぜ霜がつくのか

パッケージエアコンなどのヒートポンプは、暖房時、室外機の熱交換器(コイル)で外気から熱をくみ上げます。このとき、コイルの表面温度は外気より低くなります。外気の温度が低く湿度が高いと、空気中の水分がコイルに凍りついて霜になります。霜が厚くなると空気が通りにくくなり、熱をくみ上げる力が落ちます。

霜取り運転では何が起きているか

霜が一定量たまったと判断すると、機器は冷媒の流れを一時的に切り替えて(冷房と同じ向き)コイルを温め、霜を溶かします。その間は室内へ温風を出しにくくなり、室内機の風が弱まったり止まったりします。霜取りの時間や頻度は機種や気象条件で異なります。詳細は各メーカーの仕様書でご確認ください。

運用面で気をつけたい点

  • 室外機まわりの確保:吹出し口の前に物を置いたり、吸込み面が塞がれたりすると、霜がつきやすくなり、霜取りが増えることがあります。周囲の障害物や積雪、落ち葉の確認が有効です。
  • ドレン水の処理:霜取りで出た水は室外機の下にたまります。寒い地域では凍結して通路に氷が張る場合があるため、排水経路の確認が欠かせません。
  • 設定温度を上げすぎない:霜取り中に室温が下がると、利用者が設定温度を上げがちです。その結果、霜取り後に過剰な運転となる場合があります。まず運転の様子を確認してから判断しましょう。
  • フィルターと室外機の清掃:汚れは能力低下の一因です。暖房期の前に点検しておくと安心です。

設計・更新の目安として

暖房能力は「外気7℃」などの基準条件で表示されることが多く、寒い日の実際の能力はそれより小さくなります。寒冷地や冬の朝晩が冷え込む地域では、霜取りによる能力低下も見込んだ余裕を持たせる、あるいは低温時の性能が確認できる機種を選ぶ、といった考え方が有効です。メーカーの低温暖房能力のデータを、選定時に確認してみてください。

気づきのためのメモ

次の冬、数日間だけ「風がぬるくなる時刻」と外気温・天候を記録してみてください。頻繁に起きる場合は、室外機まわりの環境や機器の点検を専門業者に相談する手がかりになります。


想定読者:建物オーナー、施設管理担当者、設計者、自治体の施設担当者

注:本コラムは、建築環境工学・省エネ設計の一般的な知見に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。