建物の地下や屋内にある駐車場は、排気ガスにふくまれる一酸化炭素(CO)などを外へ出すため、換気ファンが設置されています。このファンが、営業時間中ずっと一定の風量で回りっぱなしになっている建物は少なくありません。車がほとんど出入りしない時間帯にも回し続けていると、電気をむだに使っている可能性があります。今回は、駐車場換気の見直しどころを整理します。
駐車場の換気は「台数」で負荷が変わる
駐車場に必要な換気量は、車の出入りの多さによって大きく変わります。朝夕の出退勤時間帯は多く、日中や夜間は少ないのが一般的です。ところが、タイマーで「時間帯ごとに一定運転」としているだけでは、車の少ない時間帯にも必要以上の風を送ってしまいます。
見直しの方向性:CO濃度センサーによる制御
代表的な方法が、CO濃度センサーでファンの運転を制御するやり方です。濃度が低いときは運転を絞るか停止し、濃度が上がったときだけ風量を増やします。ファンの消費電力は、風量を下げるほど大きく減る傾向があるため(ファンの回転数を下げたときの効果は、以前のコラム「ポンプとファンの回転数制御」でも触れました)、台数の少ない時間帯が長い駐車場ほど効果が期待できます。
方式には、ファンの発停(オン・オフ)で制御するものや、インバータ(回転数を変える装置)で風量を連続的に変えるものがあります。既存設備にセンサーと制御盤を後付けできる場合もありますが、機器構成によって可否が変わるため、設備の担当者や施工業者に確認してください。
見直す前に確認しておきたいこと
安全面と法令面の確認が欠かせません。駐車場の換気設備には、建築基準法や関連する告示・条例、消防関係の規定などが関わります。このうち駐車場法施行令では、駐車の用に供する部分が500㎡以上の、建築物である路外駐車場について、換気装置の能力を床面積1㎡あたり毎時14㎥以上と定めています(2016年8月施行の改正後の基準)。一方で、定められているのは能力で、運転の基準は定められていません。センサーの設置位置・台数、濃度の設定値、故障時にファンを確実に運転させる仕組み(フェイルセーフ)は、省エネ以前に守るべき条件です。設定値を緩めることだけを目的にしてはいけません。具体的な要件は、設計者や所管の行政庁・消防に確認することをおすすめします。
また、センサーは経年で感度が落ちることがあるため、定期的な点検や校正(正しい値に合わせ直すこと)も計画に入れておくと安心です。
まず現状を知る
いきなり改修に進む必要はありません。次の三点を確認するところから始めてみてください。
- 現在の運転方式(常時運転か、タイマーか、センサー制御か)
- ファンの台数と定格の電動機出力(銘板で確認できます)
- 一日の車の出入りの時間帯
運転時間と出力が分かれば、電力量のおおまかな見当がつきます。数字を持って設計者や施工業者に相談すれば、見積りの比較もしやすくなります。
駐車場は、目立たない分、見直しが後回しになりがちな場所です。冬を迎える前の設備点検の機会に、ファンの運転方法を一度見直してみてはいかがでしょうか。
想定読者:建物オーナー、施設管理者、自治体の施設担当者、設計者
注:本コラムは公開されている資料に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。
参照
- 国土交通省 報道発表「「駐車場法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました」(平成28年7月12日):https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi09_hh_000032.html (換気装置の能力:床面積1㎡あたり毎時14㎥以上)
- 環境省 SHIFT事業 対策概要シート「駐車場換気設備のスケジュール運転」:https://shift.env.go.jp/files/navi/measure/113211.pdf (換気設備の能力は定められているが運転基準は定められていないこと)