高圧で受電している建物の検針票には、使用電力量や契約電力と並んで「力率」という数字が載っています。目に留まることの少ない欄ですが、ここは毎月の基本料金を直接増減させています。冷房負荷が引いていくこの時期は、1年分をまとめて見直すのによい機会です。

電流のうち、仕事をしている分の割合

モーターや変圧器は、磁界をつくるために電流を使います。この分の電流は仕事をせず、電源と機器のあいだを行き来するだけです。これを無効電力と呼び、実際に仕事をする有効電力との比が力率です。

建物には空調のファンやポンプ、冷凍機の圧縮機などモーターが数多くあります。放っておけば力率は下がるため、受電設備には進相コンデンサ(力率改善用コンデンサ)を設けて打ち消しています。

85%を境に、1%ごとに1%

力率が料金に効く仕組みは、電力会社の料金表に明記されています。中国電力の標準料金表(2025年4月1日実施)では、業務用電力・高圧電力とも、力率が85パーセントを上回る場合はその上回る1パーセントにつき基本料金を1パーセント割引し、下回る場合は下回る1パーセントにつき1パーセント割増しすると定められています。

力率98%なら基本料金は13%引き、80%なら5%増しです。基本料金は使用量にかかわらず毎月かかりますから、差は年間で積み上がります。

コンデンサの更新目安は「15年」

進相コンデンサは手のかからない機器で、だからこそ竣工時のまま何十年も置かれていることがあります。

日本電機工業会(JEMA)は、高圧進相コンデンサ設備の更新推奨時期を15年としています。コンデンサへの直列リアクトルの取り付けも、高調波対策と突入電流の抑制のためJIS C 4902や高圧受電設備規程(JEAC 8011)で原則とされていますが、古い設備では未設置の例もあります。低圧側でも、1975年以前に製造された低圧進相コンデンサは寿命の領域にあり、火災に至る危険性があるとして使用停止と取替えが呼びかけられています。

劣化すれば力率改善の効果は失われます。料金の面でも保安の面でも、放置して得になる機器ではありません。

検針票を12か月ぶん並べてみる

まずは過去1年の力率を書き出してみてください。85%前後で推移しているなら改善の余地があり、月ごとに大きく振れているなら、負荷の変化にコンデンサの容量が合っていない可能性があります。

自家消費型の太陽光を導入した建物では、受電点で計量される有効電力が減るため、力率の見え方が変わることがあります。

力率の改善そのものは、省エネ計算の一次エネルギー消費量には現れません。ZEBの評価が上がるわけではありません。それでも毎月の請求書は変わります。まずは検針票の一行を、電気主任技術者の方と一緒に見てみてはいかがでしょうか。


想定読者:建物オーナー・施設管理のご担当者、自治体の施設ご担当者、設計者

注:力率割引・割増しの条件は契約している小売電気事業者および料金メニューによって異なります。ご自身の契約内容は料金表・契約要綱でご確認ください。コンデンサの状態確認・取替えは、電気主任技術者または保安管理業務の受託者にご相談ください。

参照

  • 中国電力「標準料金表」(2025年4月1日実施)1(業務用電力)(3)、5(高圧電力)ハ ほか:https://www.energia.co.jp/elec/pdf/20250401hyojunryokin.pdf (力率85%を境に1%につき基本料金1%の割引/割増し、力率は託送供給等約款に定める方法で算定)
  • 一般社団法人日本電機工業会「知っておきたい 高圧進相コンデンサ設備の正しい取扱い」:https://www.jema-net.or.jp/engineering/capacitor/con2.html (更新推奨時期15年、直列リアクトルの原則設置=JIS C 4902:2010/JEAC 8011-2014 高圧受電設備規程 1150-9)
  • 一般社団法人日本電機工業会「長年ご使用の『低圧進相コンデンサ』は発火の危険性があります」:https://www.jema-net.or.jp/engineering/capacitor/condenser.html (1975年以前製造品は寿命の領域、使用停止と取替えの呼びかけ)