病院、ホテル、工場、大型の浴場施設などでは、暖房や給湯、加湿のために蒸気を使っている建物があります。蒸気は熱を運ぶ力が大きい反面、配管や機器の不具合が目に見えにくく、気づかないまま熱を捨て続けていることがあります。暖房シーズンが始まる前に、蒸気系統の点検ポイントを整理します。
蒸気は「熱を渡すと水に戻る」
蒸気は、機器で熱を渡すと凝縮して水(ドレン、凝縮水)になります。このドレンを、蒸気を逃がさずに排出する弁が「スチームトラップ」です。トラップは、蒸気は通さずドレンだけを外へ出す自動の弁と考えると分かりやすいでしょう。
トラップの故障は2通りある
トラップが壊れると、主に次の二つの症状が出ます。
- 蒸気漏れ(開いたまま):蒸気がドレン配管へ抜け続け、ボイラーで作った熱が無駄になります。
- 詰まり(閉じたまま):ドレンが機器内に溜まり、暖まりにくくなったり、配管内で水が蒸気に押されて衝撃音(ウォーターハンマー)が出たりします。
とくに蒸気漏れは、室内の暖かさに影響しないため、現場で見過ごされやすい不具合です。
現場でできる点検の入口
専門業者による診断が確実ですが、管理担当者でも次のような点から気づけます。
- ドレンの排出先や回収タンク付近から、白い蒸気が常に上がっていないか。
- 運転中に、トラップの入口側と出口側で配管の温度に不自然な差がないか(測定は火傷に注意し、温度計や非接触の計測器を使います)。
- 加熱側の機器が設定どおりに暖まっているか、衝撃音が出ていないか。
- トラップの設置台数や設置年を台帳で把握しているか。
トラップの点検方法には、音を聞く方法、温度を測る方法、専用機器で判定する方法などがあります。点検頻度や交換時期は、使用条件や機種により異なるため、メーカーや保守業者の推奨を確認してください。
保温とドレン回収も合わせて見る
蒸気配管やバルブ、フランジ(配管の接続部)の保温が外れていると、そこから放熱が続きます。また、ドレンはまだ熱を持っているため、回収してボイラーの給水に戻せると、燃料の削減につながります。回収配管が傷んでいないか、回収タンクから蒸気が吹いていないかも、あわせて確認したい項目です。
見直しの優先順位
まず、蒸気の使用先(暖房、給湯、加湿、厨房、洗濯など)を一覧にし、季節ごとの使用量を把握します。そのうえで、トラップの状態確認、保温の補修、ドレン回収の順に、費用の小さいものから手をつけるのが現実的です。蒸気を使う設備そのものを、ヒートポンプなどに切り替える検討は、更新計画の中で行うとよいでしょう。
想定読者:建物オーナー、施設管理担当者、工場・病院・宿泊施設などの設備担当者、自治体の施設担当者
注:本コラムは、建築環境工学・省エネ設計の一般的な知見に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。