ZEB(ゼブ/ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を目指す建物では、屋根の太陽光発電が「創エネ」の主役になります。ただ、設置から数年が経った建物をお訪ねすると、「発電量を確認したことがない」というお話を意外なほどよく伺います。太陽光は動く部品が少なく、不具合が起きても音も匂いもしません。こちらから見に行かないと気づけないのです。夏のピークを越えた今は、一年の成績を振り返るのに向いた時期です。
気づかないまま減っていく三つのパターン
パワーコンディショナ(パワコン)の停止 ― 直流を交流に変える機器の側で止まっていることがあります。パワコンが複数台ある建物では、一台止まっていても全体は発電を続けるため、モニタを見ていなければまず分かりません。落雷後や停電復帰後にそのまま止まっているケースもあります。
後からできた影 ― 竣工時には日当たりが良くても、樹木は伸び、隣地に建物が建ちます。屋上に室外機やアンテナを増設して、その影がかかることもあります。太陽光は一枚のパネルに影がかかると直列につながった系統全体の出力が落ちるため、影響は見た目の面積より大きく出ます。
汚れ ― 砂ぼこりや鳥のふん、落ち葉。一部だけが汚れて残ると、そこが発熱の原因にもなります。
難しいことをせずに確かめる
まずは月ごとの発電量を記録し、前年の同じ月と比べてみてください。一か月の差で慌てる必要はありませんが、下がったまま戻らない月が続くようなら何かが起きています。気象庁やNEDOが公開している日射量データと突き合わせれば、天候のせいか設備のせいかを切り分けやすくなります。よく晴れた日の昼のピーク出力を定格容量と見比べるのも簡単な方法で、パワコンが一台落ちていればここに素直に表れます。
台風のあとと、休日の余り
九月は台風の季節でもあります。強風のあとは飛来物によるパネルの割れや架台の緩みを確認したいところですが、屋根に登っての点検はお勧めしません。パネルは割れていても日が当たれば発電しており、感電と転落の危険があります。施工業者や保守業者にご依頼ください。
もう一つ、自家消費型の建物で見落とされがちなのが「休日の余り」です。建物を止めている日は使う電気が少なく、逆潮流(余った電気を電力系統へ流すこと)が認められていない契約では、発電のほうを抑えることになります。発電のカーブと運転スケジュールを重ねると、こうしたずれが見えてきます。
認証は設計、実績は運用
BELSやZEB認証は設計時の計算にもとづく評価であり、運用中にどれだけ発電しているかを保証するものではありません。設計どおり動いているかを確かめるのは、建物を持っている側の役目です。点検というと不具合探しのようですが、実際には「今年もきちんと働いていた」と確かめる作業が大半です。年に一度、その確認をする習慣をお持ちいただければと思います。
想定読者:太陽光発電を設置済みの建物オーナー、施設管理ご担当者、自治体の営繕ご担当者
参照元:環境省「ZEB PORTAL」(https://www.env.go.jp/earth/zeb/)、国土交通省・建築物省エネ法にもとづくBELS制度の考え方、気象庁の日射量観測データおよびNEDO日射量データベース。発電量の低下率や点検の頻度は設備・立地により異なるため、本コラムでは具体の数値基準を示していません。実際の点検・是正は施工業者または保守業者にご相談ください。